アブストラクト(28巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ボクダレックヘルニアにおける呼吸循環不全
Subtitle : 原著
Authors : 中原数也, 岡田正, 島崎靖久, 中尾量保, 正岡昭, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 9
Page : 1413-1420
Year/Month : 1980 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 昭和32年以来, 昭和54年8月まで阪大第一外科で経験した21例のボクダレックヘルニアの年齢分布は生後4時間から28歳まで, 男女比は4:1であった. 生後24時間以内に手術された7例中71%が呼吸循環不全で死亡したが, 生後24時間以上の14例では14.3%の死亡率で手術時年齢と予後との関係が明らかであった. ヘルニアのうの有無は1:6で, のうを有する3症例は全例死亡, のうを有しない症例では25%の死亡率であった. 右側ヘルニアの死亡率は75%, 左側23.5%であった. 出産異常は5例にみられ, 3例が死亡した. 手術時または剖検時, 肺低形成が8例にみられ, 6例(75%)が死亡した. 6例の剖検例中5例に動脈管開存症(PDA)が, 2例に卵円孔開存症があった. 1側胸腔の2/3以上を占拠するヘルニア8例中75%が死亡, 1/2以下の13例中8%が死亡した. 経時的に血液ガス分析を行い, 肺胞動脈血酸素分圧較差(A-aDo2)を計算すると, 500mmHg以上の3例ではいかなる機械呼吸の手段を用いても救命しえなかった. しかし1症例では術直後A-aDo2が180mmHgであったが, 10日目には44mmHgと改善したにもかかわらず徐々に気道内分泌物増加, 四肢浮腫, 肝腫が出現し, 術後19日目に死亡した. 本症例では径8mmのPDAがあり, 左-右シャントによる心不全が死因と思われた. すなわち本疾患の死因の中核をなす呼吸循環不全の原因は肺低形成と合併心奇型であろう. 低形成肺が生後成育する可能性はない事実を考えると, 新生児期に重篤な呼吸循環不全をともなってくるボクダレックヘルニア症例では横隔膜修復と同時にPDAを結紮することによって本疾患の救命率を向上させうると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ボクダレックヘルニア, 肺低形成, 動脈管開存, 呼吸循環不全
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