アブストラクト(28巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 膜型人工肺の実用化に関する研究-とくに熱交換器内蔵式膜型人工肺の開発ならびに臨床応用について-
Subtitle : 原著
Authors : 浜田英明, 寺本滋
Authors(kana) :
Organization : 岡山大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 10
Page : 1489-1508
Year/Month : 1980 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 膜型人工肺の臨床応用が普及しつつある今日, さらに高性能で操作性が良くしかも廉価な人工肺を目指してなお多くの研究努力が続けられているが, このたび著者は熱交換器を内蔵した新しい膜型人工肺を開発し, 実験による性能評価と臨床応用を行った. 本肺の構造上の特徴は, ガス交換部(silicone rubber膜使用)と熱交換部(stainless steel板使用)の血液流路内にspacer兼secondary flow inducerとしてpolyester meshを挿入したことで, これによるガス交換ならびに熱交換の効率上昇を期待した. モデル回路および犬を用いた体外循環による性能試験の結果, 標準血流量1.5l/分においてO2 transferは105ml/分, CO2 transferは86ml/分, pressure dropは170mmHgとなり市販のKolobow肺に比較してpressure dropの低い割にガス交換能が高く, 内蔵式熱交換器の性能も小型ながら市販のBrown-Harrison型やTravenol型より優れていた. これらの性能は24時間使用してもほとんど低下しなかった. また溶血試験および厚生省告示の品質試験の結果, 血液損傷も極めて少なく材質的にも臨床使用可能と判定できた. 臨床用体外循環回路も独自に考案したが, 膜型人工肺の特徴を生かすためclosed circuitからなる2ポンプ2リザーバー方式を採用した. 本肺は25例の小児の開心術に使用したが, 最長360分の潅流において性能および安全性に問題はなく, むしろ高すぎる酸素加性能と血液損傷の少ない点が注目された. とくに酸素加性能が高すぎるためPO2が異常高値となる場合があったが, O2とairとの混合ガス(O2濃度60~80%)を使用することにより容易に補正できた. 今後は本肺のスケールアップを図り成人用肺を完成させるとともに, O2/CO2バランスや操作性の改善を目指し, さらに研究を重ねて行きたい.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 熱交換器内蔵式膜型人工肺, silicone rubber膜, mesh spacer, secondary flow inducer, 2ポンプ2リザーバー方式
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