アブストラクト(28巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 食道癌手術例における術前肺機能面よりみた術後肺合併症の検討
Subtitle : 原著
Authors : 土器潔, 三戸康郎, 平塚降三, 白日高歩
Authors(kana) :
Organization : 福岡大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 10
Page : 1525-1532
Year/Month : 1980 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 食道癌手術後に高頻度に発生する肺合併症の要因を, 患者の術前の諸種の肺機能検査成績ならびに手術侵襲の程度との関連で検討した. 対象は食道再建術を施行された55例で, そのうち12例(21.8%)に無気肺, 肺炎, 肺水腫, ARDSなどの肺実質内の合併症が認められた. その他に膿胸3例, 乳ビ胸1例, 計4例(7.3%)のいわゆる胸膜腔内の合併症が認められ, これらは, 吻合部縫合不全や胸管損傷など手術手技に起因するものであった. 肺内合併症12例について, 術前肺機能と術後肺合併症発生との相関を検討したが, その中でもことに0.5秒率, 1秒量, 中間最大呼気流量, 残気率が極めてよく相関がみられた. すなわち, 0.5秒率が50%以上の例40例では7例(17.5%)にしか肺合併症がみられないのに対し, 50%以下の症例15例では5例(33.3%)と肺合併症が高率となり, 同様に1秒量では, 2,000ml以上で37例中7例(18.9%), 2,000ml以下の症例18例中5例(27.7%)と両者に術後肺合併症発生頻度に差が認められた. また中間最大呼気流量でも1l/sec以上では17%, 1l/sec以下のもので50%, 残気率では40%以下のもので22.2%であるのに対し, 40%以上のものでは38.5%と, 各検査値の低値を示す例で肺合併症の頻度が高かった. 右開胸食道切除再建術を施行した31例について, 術後肺合併症の発生頻度について検討すると, 両側頚部リンパ節を廓清した9例では4例(44.4%)と, 廓清を施行しなかった22例中3例(13.6%)に比べ高い発生頻度であった. これら頚部廓清を行なかった22症例についても, 術前0.5秒率が50%以上の16例では肺合併症が1例(6.3%)であるのに対し, 50%以下のものでは6例中2例(33.3%)と, また1秒量では2,000ml以上の15例では1例(6.7%), 2,000ml以下の7例では2例(28.6%)と, 0.5秒率, 1秒量の低下例に術後肺合併症の発生頻度が高く, 高齢者の多い食道癌患者では, 術前の肺機能検査の中でも, ことに0.5秒率, 1秒量が術後の肺機能不全の程度を予知する重要な指標となりうることが明らかとなった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 食道癌, 術後肺合併症, 0.5秒率, 1秒量, 中間最大呼気流量, 残気率
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