Abstract : |
開心術々後急性期における混合静脈血酸素分圧(Pvo2)の臨床的意義を心拍出量との関係を中心に検討した. 10歳以下(平均2.3歳)の開心術症例32例において, 心拍出量の測定と同時にPao2, Pvo2, Svo2(混合静脈血酵素飽和度), AVDo2(動静脈血酸素含量較差)を計130回計測し, それぞれの値と心係数(C.I.)との関係を検討した. 混合静脈血としては右心房血を用いた. 同じ心拍出量下でPvo2はPao2に強く影響されたことより, Pao2の違いによる影響を除くため, Pao2を100mmHgと仮定した時のPvo2を求めるノモグラムを作成し, 得られたものをStandard Pvo2(実測Pvo2±補正値)とした. C.I.と各パラメータは逆数関係において良く相関し, その相関係数はそれぞれ, 実測Pvo2で0.603, Standard Pvo2で0.706, Svo2で0.613, AVDo2で-0.584であった(すべてp<0.001). 血中乳酸値はStandard Pvo2と逆相関を示した(r=-0.741, p<0.05, n=7). 低心拍出量症候群を伴った群(8例)において, 術当日および術後第1日目のPvo2値は第2日目に比し有意の低下(p<0.05)を認め, またこれを伴わない群(18例)と比較して, 各時点で有意の低下(p<0.01)を認めた. 酸素消費量とC.I.の間には有意の相関は認められなかった. これらの検討より, Standard Pvo2は従来の実測Pvo2や他の指標と比べ, C.I.とより高い相関を示し, 心拍出量の予測, 低心拍出量症候群の診断上有用であると考えられた. Standard Pvo2 30mmHg以下は低心拍出量症候群の状態にあり, とくに26mmHg以下は重篤で予後不良であるため, 積極的な治療が必要である. |