アブストラクト(28巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 逆行性灌流による心筋保護-心筋冷却単独法と心停止剤併用法の比較検討
Subtitle : 原著
Authors : 小泉誠二, 阿部康之, 浜田幸男, 荒木純一, 香川謙, 堀内藤吾, 毛利平*
Authors(kana) :
Organization : 東北大学医学部胸部外科, *山口大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 11
Page : 1603-1609
Year/Month : 1980 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 大動脈遮断中の心筋保護として, 心室中隔温を10~15℃に維持するように落差60~80cm(潅流量15~40ml/分)による逆行性潅流冷却を行った. 冷却潅流液としては4℃乳酸リンゲル液を24例に(A群:冷却単独群), 4℃心停止液(K+23, Na+26, Cl-26, Mg++5, Tromethamine 3mEq/l, pH7.80, 滲透圧398mOsm/l)を30例に使用し(B群:心停止剤併用群), 両群の心筋保護効果を比較検討した. 対象とした症例はNYHA III度以上の心機能低下が著しい弁置換例が主であり, 大動脈遮断時間はA群で47~165分(平均85分), B群で45~155分(平均87分)であった. 遮断解除後に長時間の補助循環を必要とする症例はA群に多く, B群に比し体外循環時間は著しく延長していた. また, 遮断解除後に電気的除細動を要した症例はA群で19例(79%), B群で4例(13%)であった. 術直後の心係数は両群間に有意差を認めなかった(A群:3.45±0.78l/min./m2 B群:3.12±0.67l/min./m2). 低心拍出量症候群, 心室性不整脈等の術後早期合併症の出現は遮断90分以内では両群間に有意差を認めず, 90分以上ではA群で9例中6例(67%), B群で12例中4例(33%)に出現した. 術後のLDH1アイソザイム活性値はA群で上昇し術後2週以降に正常範囲に回復したのに対し. B群の変動は少なく正常範囲内に留っていた. 遮断解除直後における乳酸, ピルビン酸の心筋摂取率は遮断90分以上のA群で著しい低下を示したのに対し, B群では遮断時間に関係なく摂取率の変動は少なく心筋虚血による代謝への影響は軽微であることを示していた. 以上の結果から, 心筋冷却単独法においては90分以上の遮断により心筋障害の発生が明きらかであったのに対し, 心停止剤を併用することにより心筋エネルギーは良好に保持されており, 心機能低下例においても120分までの遮断は安全に行えるものと判断された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 逆行性潅流, 心筋冷却, 心停止剤, 心筋障害, 大動脈遮断時間
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