アブストラクト(28巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 膜型肺による体外循環と血小板保全について
Subtitle : 原著
Authors : 川田忠典, 荒瀬一己, 藤岡照裕, 舟木成樹, 長田博昭, 岡田忠彦, 稗方富蔵, 野口輝彦
Authors(kana) :
Organization : 聖マリアンナ医科大学第3外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 11
Page : 1636-1642
Year/Month : 1980 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環に伴う血中血小板の減少は膜型肺においても例外ではなく, その一部は膜表面の血小板に対する生物学的不適合性が関与していると思われるが, 一部は充てん時の膜面残留気泡が重大な影響をおよぼしていると考えられた. 今回の臨床的研究は人工肺内残留気泡除去を図り, さらに潅流中の血小板機能を抑制することが血小板保全に有効であろうという想定に基づいたものである. 膜型肺を用いた開心術67症例をA群(単純充てん法)17例, B群(Dipyridamole 100mg/L充てん液中添加)21例, C群(人工肺内炭酸ガスflushing法)11例, D群(炭酸ガスflushing+充てん液中Di-pyridamole添加)18例の4群に分けて血小板数の変動を分析した. 潅流開始直後の初期血小板降下はA群がもっとも著しく潅流前値の41%に減少し, ついでB群49%, C群57%, D群65%の順であった. この初期降下後潅流中の血小板はA群が50%以下であったのに反し, B, C, D群では50%以上の血小板が血中に維持された. 潅流終了直後B, C, D群は明らかに血小板の血中復帰がみとめられ, おのおの潅流前の73%, 66%, 77%の血小板値を示したが, A群では42%にとどまり, 不可逆的減少が優勢であることを示した. 潅流時間と潅流終了直後の血小板値との間には相関関係はみとめられず, 第2, 第3病日の血小板値は長時間潅流例ほど低値を示す率が高かった. 血小板凝集粘着能はB, C, D群について比較したが, 潅流終了直後低下していた両機能は第1病日以後潅流前値あるいはそれ以上に回復し, とくに粘着能についてはDipyridamole群(B, D群)が第1~第3病日術前値以上に亢進したがC群との間に有意差はみられなかった. 以上, 膜型肺内の残留気泡除去, 潅流中血小板機能抑制の併用は潅流中, 後の血小板保全に有効であることが示された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 膜型肺, 血小板, Dipyridamole, 炭酸ガス吹送
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