アブストラクト(28巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 稀釈血灌流による屍体心保存-同所性移植による保存効果の評価-
Subtitle : 原著
Authors : 有川和宏, 秋田八年
Authors(kana) :
Organization : 鹿児島大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 11
Page : 1643-1653
Year/Month : 1980 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 雑種成犬30頭を用い, 冠潅流による屍体内心保存を行った. 対象とした心臓は脱血による屍体心とし, 死亡確認後常温下に約30分放置の後, ヘマトクリット値30%に稀釈した自家血で40-50cmH2Oの低圧冠潅流法を用い, また潅流血の冷却および心外側からの直接冷却法にて15℃の低温を目標として60分間の保存を行った. 保存心30例中20例を無作為に選択して体外循環下同所性心移植を行い, 実際に循環の負荷をかけてみることで保存が適正に行われたか否かを総合的に評価した. 保存後移植20例中16例は体外循環を離脱しえて移植犬の固有循環を維持しえた. これらについて移植後2時間を越えて固有循環を維持できた成績良好群と, 2時間に満たなかった成績不良群とについて, 逆行的に保存中の生理学的あるいは生化学的パラメーターを検討した. しかし多くのパラメーターに有意の差を求めることは出来ず, 実験で選んだパラメーターに関するかぎり保存段階の成績で臓器のtransplantabilityに対する予測は適確ではなかったしまたそれで臓器のviabilityを決めるのは危険と考えられた. ただexcess lactateが示した結果は移植成績と相関する部分が認められ, その有用性が窺われた. 血液による冠潅流保存は, 臓器の代謝を維持するという考え方では理想のものである. しかし非生理的状態では血液であるがための隘路も否めない. 本実験で選択した40-50cmH2Oの低潅流圧, ヘマトクリット値30%の稀釈潅流血, 保存温度域15℃での保存法はそれらの短所を最小にすべく選んだものである. この方法に依る保存心はその後の移植操作の負荷に耐えて良好な成績を呈しえた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 同所性心移植, 常温下阻血, 低温低圧冠潅流保存
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