アブストラクト(28巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心保存の実験的研究-viabilityに関連の因子とその評価-
Subtitle : 原著
Authors : 浜田義臣, 秋田八年
Authors(kana) :
Organization : 鹿児島大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 11
Page : 1654-1667
Year/Month : 1980 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心保存に関与すると思われる, 1)低温による代謝抑制, 2)カリウムによる心筋エネルギーの保存, の2点について, いずれがより重要な役割を演じているかを明らかにするため雑種成犬を用いて実験を行った. 第1段階の実験として, 失血死後30分の常温下阻血を経過したgraftについてProctorら, Copelandらの方法を応用し作成した屍体内心標本で, 60分間の低温, 低圧冠潅流保存を行い, さらにその保存graftを体外循環下に同所性に移植し実際に機能させてみることで, graftのviabilityを総合的に評価した. 潅流液としてEL-3号液(K+35mEq/L), modified Krebs液(K+6.2mEq/L)を用い, それぞれ28例, 20例を冠潅流保存し, 両群ともに14例ずつを同所性に移植した. 14例中, 前者(EL-3号)の11例, 後者(modified Krebs)の9例がrecipientの循環負荷に耐える良好な血行動態を示した. その結果, 本実験では当初予測した低温, カリウムの2つの因子のうちいずれがより心保存に重要なのか明らかにできなかった. したがって, 第2段階の実験として, 屍体内心保存実験で用いた2種の潅流液の温度に変化をもたせることで(低温4℃, 常温37℃)カリウム濃度, 温度のそれぞれ異なる都合4種の冠潅流液条件を設定し, 体外循環下に90分間の大動脈遮断を行い, その間にそれぞれの設定にしたがって, 30分間隔での間歇的冠潅流を行い, 大動脈遮断を解除し, 体外循環よりの脱却を試み, その後の心機能を評価して, 両因子が心保存に関与する度合について検討した. その結果, 低温併用群では潅流液の差にもかかわらず, 人工心肺脱却率, 心機能ともに満足すべきものであった. 常温を併用したmodified Krebs液使用群では4例とも脱却不能で, EL-3号液使用群では4例中2例のみの脱却にとどまった. 以上の実験から, カリウム濃度および温度の両者のうち, 心保存により深く関与するのは温度で, 低温が本質的に重要な役割を演じているとの結論をえた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋庇護, 低温, カリウム, 心臓移植
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