| Abstract ： |
pyrolytic carbonより構成された2枚のdiscを用い, 複葉中心開口方式をとっているSt.Jude Medical弁による僧帽弁置換術を日本大学医学部第2外科学教室で1978年7月より行った症例のうち, 術後血行力学的検索を行い得た症例20例について検討し, その弁機能の臨床的評価をCarpentier-Edwards弁, Starr-Edwards ball弁(6400)などの人工弁置換症例およびopen mitral commissrotomy症例と比較検討した. St.Jude Medical弁置換症例群(average of the all sizes)の術中左房・左室拡張期圧較差は1.25±1.64mmHg, 術後安静時圧較差は0.91±1.14mmHg, 運動負荷時圧較差は1.23±1.38mmHgで安静時と比較して有意差を認めなかった. 有効弁口面積は安静時3.86±0.81cm2, 運動負荷時3.99±0.77cm2であり軽度増加した. これに対しCarpentier-Edwards弁置換症例群では, 安静時圧較差3.86±1.22mmHg, 運動負荷時5.86±1.10mmHg, 安静時有効弁口面積2.80±0.64cm2, 運動負荷時2.28±0.31cm2を示し, Starr-Edwards ball弁(6400)置換症例群では, 安静時圧較差5.43±2.88mmHg, 安静時有効弁口面積2.64±0.77cm2であり, 圧較差および有効弁口面積で, これらの人工弁置換症例群とSt.Jude Medical弁置換症例群は有意差を認めた. また運動負荷時ではCarpentier-Edwards弁置換症例群で圧較差の上昇を認め, しかも有効弁口面積が減少するのに対しSt.Jude Medical弁置換症例群では有意の上昇を認めず, 有効弁口面積でも逆に増加した. しかし, open mitral commissurotomy症例群は安静時圧較差1.80±2.49mmHg, 安静時有効弁口面積3.99±1.23cm2を示し, これとは有意差を認めなかった. 術後の臨床症状では全例改善を示し, 全例NYHA機能分類I度であり, 血清LDH, hemosiderinuria, reticulocyte countからみた溶血もほとんど認めなかった. 本弁の弁機能は, 他の人工弁に比較しとくに優れており, 溶血が極めて少なく, 今後非常に期待される人工弁であると考える. |
