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開心術中の心筋保護法として, Coenzyme Q10(以下CoQ10と略す)の虚血心筋に対する心筋保護効果をエネルギー代謝面から実験的に検討した. すなわち, 雑種成犬20頭に対し, 軽度低体温(直腸温30℃)併用完全体外循環下に2時間の大動脈遮断を行い, 5頭ずつ以下の4群に分け, 検索を行った. I群:対照群として, CoQ10を投与せずに放置した群. II群:CoQ10を含まないCoQ10の溶解液のみを1ml/kg, 大動脈遮断を行う1時間前に経静脈的に投与し, 大動脈遮断直後およびその1時間後さらに0.1ml/kgを冠動脈内へ投与した群. III群:CoQ10 10mg/kg(1ml/kg)を大動脈遮断を行う1時間前に経静脈的に投与した群. IV群:CoQ10 10mg/kg(1ml/kg)および1ml/kg(0.1ml/kg)をII群と同様な方法でそれぞれ経静脈的ならびに冠動脈内に投与した群. 以上の4群に対し, 心筋組織内のadenosine triphosphate(ATP), adenosine diphosphate(ADP), adenosine monophosphate(AMP), これら3つのパラメーターより算出されるenergy charge, 乳酸, creatine phosphate(CP)およびinorganic phosphate(Pi)の経時的変動を定量的に検討し, 以下の知見を得た. (1)心筋内ATP含量は, 大動脈遮断中および遮断解除後を通してIV群で最も高い値に維持され, I群に対して有意差が認められた. また, III群では遮断90分まではIV群についで有意に高く維持されたが, 遮断120分でI群と同値にまで低下した. (2)心筋内乳酸含量は, IV群で虚血中の増加が最も抑制された. とくに遮断後90分および120分においてIV群とI群との間に有意差が認められた. (3)心筋内CP含量は, IV群で最も高い値に維持された. とくに遮断後120分と遮断解除後30分においてIV群とI群との間に有意差が認められた. (4)したがってCoQ10の投与により大動脈遮断下の虚血心筋内で, 高エネルギーリソ酸化合物であるATP, CPが温存され, 一方で乳酸の蓄積が抑制されることが証明された. |
