アブストラクト(28巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 部分体外循環法による胸部下行大動脈瘤の外科治療
Subtitle : 原著
Authors : 数井暉久, 岡本史之, 横山秀雄, 山田修, 山口保, 山岸真理, 高田憲一, 大野猛三, 安達博昭, 大堀克己, 田中信行, 小松作蔵
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 12
Page : 1751-1758
Year/Month : 1980 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸部下行大動脈瘤の補助手段として種々の方法が用いられているが, 教室では昭和50年以降, 原則として, 部分体外循環法を用いている. 今回著者らは, 昭和54年12月末日までに部分体外循環法を用いて外科治療を施行した胸部下行大動脈瘤25例の手術手技および手術成績について検討を行ったので報告する. 対象は16~74歳, 平均50歳, 動脈瘤の形状は嚢状動脈瘤2例, 紡錘状動脈瘤2例, 吻合部仮性動脈瘤3例, 外傷性仮性動脈瘤1例, 解離性大動脈瘤III型17例であり, このうち待期手術は22例, 緊急手術は3例であった. 部分体外循環に際して, 静脈脱血は右房より21例, 右房・右室より3例および右室より1例ですべて落差にて行い, 右橈骨動脈収縮期圧が遮断前値より30mmHg以上高い値にならないように脱血量を調整し, 送血は左大腿動脈より行い, 1,200ml~2,000ml/min前後の流量を保った. 潅流時間は35~260分, 平均65分であった. 外科治療の内訳は側壁縫合術3例, パッチ縫着術3例, 人工血管置換術19例であった. 外科治療の成績は, 早期死は4例で, 吻合部出血3例, 大動脈弓部解離1例, 合併症は左腸骨静脈損傷1例, 術後出血3例, ストレス潰瘍1例, 腎不全1例であり, 晩期死は3例であった. 部分体外循環法は, 1)潅流操作が容易かつ迅速に行いうることから緊急手術にも適している, 2)手術時の大出血に対処しうる, 3)心蘇生法にも応用しうる, 4)心拍出量に関係なく潅流量を一定に保つことができる, 5)術野を妨害しないなどの利点を有している. なお欠点としてはヘパリン使用による剥離部位および人工血管よりの出血などがあげられるが, 手術手技の向上, 人工血管の選択などより対処しうることから胸部下行大動脈瘤手術の補助手段として有用であると思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸部下行大動脈瘤, 大動脈遮断, 補助手段, 部分体外循環法
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