アブストラクト(28巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 頻脈の外科治療に関する研究とくにWPW症候群に対する副伝導路切断術について
Subtitle : 原著
Authors : 浅野哲雄, 庄司佑
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学第2外科胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 12
Page : 1768-1783
Year/Month : 1980 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : WPW症候群における副伝導路切断術の確立および治療成績の向上を図る目的で副伝導路の存在部位, 有効不応期, 手術方法等につき検討した. 15例においてKent束の有効不応期を測定した. 方法として心房頻回刺激法, 心房早期刺激法, 心房細動・粗動時の頻拍による分析, re-entry性上室性頻拍による分析の4種を行ったが, 有効不応期を明確に求めえたのは心房早期刺激法における8例のみであった. 副伝導路の存在部位を調べる目的で, 全例をRosenbaumに従って分類し, 心室心表面地図を9例に, 心房心表面地図を5例において作製した. 開心術中に心房側三尖弁輪周囲の逆伝導を2例において検査した. 心表面地図における副伝導路存在部位とRosenbaumおよび上田の分類による部位とは比較的よく一致した. 心室心表面地図は心房ペーシング下で作製した方が計測しやすく約40点より誘導する事により詳細な地図を作製することができた. A型1例, B型5例に副伝導路切断術を行った. 2例に術後WPW型心電図及び頻拍発作の再発をみたが, 発作は2例とも術前に比し軽減短縮していた. 術中術後を通じ手術操作に伴う合併症の発生はなかった. Kent束の有効不応期は明確に求めるのが困難なことがあり, 基本調律で変化することなどから考えても, 手術適応の決定にあたっては有効不応期のみでなく実際の臨床症状を重視すべきと考える. 副伝導路の存在部位を推定する方法としてRosenbaumおよび上田の分類は簡単で有用であるが, 実際の手術に際しては心表面地図の作製は下可欠で心室のみでなく心房や, 三尖弁輪周囲の検索を合わせ行うことによりさらに部位を明確にできる. 部位の明確化と, 心房と心室とを広範囲に全層切離することにより治療成績の向上をみた. WPW症候群の根治術として, 副伝導路切断術は効果があり安全に行いうるものと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : WPW症候群, 副伝導路切断術, 心表面地図, 有効不応期
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