アブストラクト(28巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 乳幼児開心術に対する超低体温低流量完全体外循環法の応用
Subtitle : 原著
Authors : 今村洋二, 竹内成之, 加藤木利行, 前原正明, 井上正
Authors(kana) :
Organization : 慶応義塾大学医学部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 12
Page : 1796-1802
Year/Month : 1980 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 教室では, 昭和50年より, 乳幼児複雑心奇形, 重症心疾患の開心根治手術に際し, 超低体温低流量完全体外循環法(hypothermic low-flow cardiopulmonary bypass technique, low flow perfusion法)を用いて来た. 教室でいう超低体温低流潅流法とは, 完全体外循環中, 直腸温25℃以下, 潅流量40ml/kg/min.以下の潅流状態が, 10分間以上持続したものとした. blanketとice bagによる軽度表面冷却を併用, 体外循環開始と同時に中心冷却を開始し, 1~2℃/5分下降するよう水温を調節する. 体温降下に伴い体外循環流量を減じ, 直腸温30℃で60ml/kg/min., 25℃で40ml/kg/min., 20℃で25ml/kg/min., 20℃以下で15~20ml/kg/min.の流量で潅流を行う. 心内操作は, 冷却過程中より開始する. 加温時には, 酸素消費量の増加, および加温効率の上昇に対処すべく冷却時潅流量の20~50%増としており, 熱交換器, blanketの温度は直腸温との較差を10℃以内としている. 昭和54年12月末までに33例の乳幼児例に本法による開心術を行い, うち8例(死亡率24%)を失った. 死亡例は, 術前状態が極めて不良なまま緊急手術を行い救命しえなかったもの(Complete ECD, TAPVDの各2例), 術式(S.V.), 手術時期(TGAの2例), 術後管理(VSD+PH)に問題があったものである. 生存例25例では, 全例体外循環よりの離脱は容易であり, 体外循環法に起因して, 術後管理に難渋した症例はなかった. 問題とすべき合併症は, TGA II群に認められたsubdural effusionのみであった. 本法は, 循環停止を行わずに良好な視野が得られ, 流量の調節のみで通常の体外循環と同様な手技で行え, 水分の血管外への移行も少なく, 術後の呼吸管理も比較的容易である等の特徴を有している. 低体温法と体外循環法の利点を生かし, 循環停止を行わない本法の意義は, きわめて大きいと考えている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 乳幼児開心術, 超低体温低流量完全体外循環法, 循環停止法
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