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開心術中の心筋保護法として, 冷却液冠潅流法を, 実験的, 臨床的に検討してきたが, 臨床例の検討からは, より確実, 迅速な心筋冷却を得る必要を認めた. その目的で, 心停止液として, modified Young氏液を冷却液による冠潅流の直前に併用する場合の有用性を実験的に検討した. また, 心停止液併用冷却液冠潅流法の心筋保護効果を, 左心室機能および心筋代謝の面より検討した. 実験には, 左心室肥大犬25頭を使用し, 2時間の大動脈遮断中, 以下の3群に分けて, 実験を行った. I群:虚血中, 誘発心室細動のみで, 心筋を室温に放置する. II群:虚血中, modified Young氏液の大動脈根部への注入に続いて, 室温の乳酸加リンゲル液によって間歇的に冠潅流を行う. III群:虚血中, modified Young氏液の注入に続いて, 4℃の乳酸加リンゲル液によって, 間歇的に冠潅流を行い, 心筋温度を15℃に維持する. その結果として, (1)III群ではmodified Young氏液を併用する場合には, 冷却液冠潅流のみの場合に比し, 心筋温度1℃下降に要する冷却時間, 冷却液量が有意に減少する結果が得られた. (2)III群の左心室機能は, 虚血前に比し, 虚血後は, Aop, (大動脈圧), LVp(左心室圧), 80%以上, LV peak dp/dt(左室内圧最大上昇率)75%C.O.(心拍出量)80%の良好な回復をみた. I群の心機能の回復は得られなかった. (3)3群における心筋代謝の検索では, III群は, 他の2群に比し, 有意にCP, (クレアチン燐酸), ATP, (アデノシン燐酸), EC(energy charge)の減少が, またlactateの増加が抑制された. 以上の結果からみて, 冷却液冠潅流法に心停止液を併用することにより, より確実, 迅速な心筋冷却が得られ, 肥大心筋に対する2時間の大動脈遮断に対しても, 本法は, 左心室機能, 心筋代謝の面よりみて, ほぼ満足すべき心筋保護効果を示した. |
