アブストラクト(29巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁交連切開術の術式と予後
Subtitle :
Authors : 土岡弘通, 中井堯雄, 内木研一, 加藤量平, 福田巌, 永田昌久, 矢野孝, 小林正治, 数井秀器, 寺沢利昭, 弥政洋太郎*
Authors(kana) :
Organization : 愛知医科大学第2外科, *名古屋大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 1
Page : 33-40
Year/Month : 1981 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 僧帽弁交連切開術の術後歴に影響を与える要素を検討し, あわせてその術式―非直視下用指裂開法(CMCF), 経心室弁口開大器法(CMCD)および直視下法(OMC)―の評価を試みた. 術後1年以上を経過した279例(CMCF:84, CMCD:146, OMC:49)を延べ2,423年追跡し, 原則として2年毎にアンケート調査と非観血法による外来検査を繰返した. NYHA旧分類重症度, 心胸郭比, Rv1+Sv5/Rv5+Sv1比, 左房中間圧, 前尖後退速度, 最大振幅, 左室駆出率を指標とし, 術後年毎に平均値を求めて手術手技毎に比較検討した. 全経過中に26例の遠隔死亡と20例の再狭窄に対する再手術があった. 再手術なしの術後生存率(%)は, CMCF 22年で45.6±6.4(X±SE), CMCD 16年で90.4±3.4, OMC 13年で95.5±2.3であった. CMCDとOMC間には統計的有意差がなく(P>0.05), CMCFは他の2群より明らかに劣っていた(P<0.001). 初回手術時に弁病変が高度(とくに石灰沈着)であった症例の47%, 交連切開によって得られた弁口面積が2.6cm2以下であった症例の56%, 術後に逆流を残した症例の27%が15年以内に遠隔死亡または再手術となった. 一般に各種検査値は術後にいったん改善され, それ以後は経年的に徐々に悪化する傾向を示したが, この傾向にCMCDとOMC間で有意差がなかった(P>0.05). リウマチ性疾患である僧帽弁狭窄症の交連切開術後の再狭窄を防止するためには抗生剤の生涯投与と適切な交連切開が必要である. 術後13年(OMCの最長追跡年)までの遠隔成績でOMCとCMCDの間に有意差がみられなかった事実から, この手術の予後は手術手技もさることながら現存する弁病変によって強く規制されること, および厳密な適応のもとでのCMCDの有用性が現在もなお存在することを結論づけた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁交連切開術, 手術遠隔予後, 手術手技の評価
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