アブストラクト(29巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 大動脈弁膜症合併疾患に対する心筋庇護法
Subtitle :
Authors : 夏秋正文, 樗木等, 中江世明, 福地晋治, 橋本明政, 小柳仁, 長柄英男*, 和田寿郎*, 北村信夫**
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学心臓血圧研究所外科, *東京女子医科大学心臓血圧研究所胸部外科, **国立大阪病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 1
Page : 48-55
Year/Month : 1981 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 大動脈弁膜疾患では, 高度の心筋肥大や心筋傷害を伴う例が多く, また開心術に際しては長期間の阻血を必要とすることが多いため, 心筋庇護法の優劣が手術成績を左右する大きな因子となる. 教室では, 大動脈弁膜症の心筋庇護法として3つの方法を採用してきた. 1975年10月より1977年5月迄は, 体外循環血液による選択的持続冠潅流法を採用し, 比較的高流量の持続冠潅流を行った(Group I). この方法では, 心室細動下の冠潅流となり, 潅流圧の上昇を招くことがあり, 術後低心拍出量症候群(LOS.)や不整脈の発生が時折認められた. 1977年5月以降は, cold cardioplegiaを採用してきた. 比較的高濃度のK, Mgを含有したYoung氏液による心停止後, GIK液を中心とした潅流冷却液を40~60分毎に冠潅流し, 心筋温を10~12℃に下降させた. cold cardioplegiaを採用して以来, 手術成績の向上が認められたが, 重症例や長時間阻血例ではなおLOS.の発生が認められた(Group IIA).すなわちこの方法では, non-coronary collateral flowの影響を受けて心筋温がしだいに上昇してくることが, 問題点として考えられた. そこでこの様な重症例では, cold cardioplegiaを施行した後, 体外循環血液による冷却血液持続冠潅流法を採用した(Group IIB).この方法の主な目的は, 心筋温を持続的に冷却することにあるため, 低流量の冠潅流とし(2ml/kg/min.), 潅流圧もcoronary line pressureで100mmHg以下とした. この方法を採用して以来, LOSによる死亡例が減少した. 大動脈遮断解除後の冠静脈血の血液ガス分析を行うと, pHおよびBASE EXCESSに関して, 動脈血との較差が小さく, 阻血中心筋は良好に庇護され, 再潅流後は速やかな好気的代謝が営まれていることが確認された. 冠静脈血のMB-CPKは低値を示し, 術後の血行動態の面からも, 本法は良好な心筋庇護法であることが判明した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈弁膜症, 心筋保護, Blood-GIK, 持続冠潅流法, 血液ガス分析
このページの一番上へ