アブストラクト(29巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Porcine xenograftによる僧帽弁置換術の手術成績と術後血行動態
Subtitle :
Authors : 花田捷治, 浅野献一
Authors(kana) :
Organization : 東京医科歯科大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 1
Page : 63-73
Year/Month : 1981 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1977年以後, 教室で行われたglutaraldehyde処理porcine xenograftによる単独僧帽弁置換術50症例を対象に, 手術成績と, うち17例の術後遠隔期血行動態を, 運動負荷時も含め両心カテーテル検査を行い検討した. 病院死亡は12%であったが, 死因に生体弁自身に由来するものはなかった. 耐術例は全例, 術後NYHA機能分類でI, II度に改善した. 抗凝固療法はワーファリン, ブコローム併用療法を術後6ヵ月まで行い, 以後は中止した. 血栓塞栓症は2例に, 約2年後発生したが, いずれも軽快した. 術前後の血行動態では, 収縮期肺動脈圧(PAs)平均肺動脈楔入圧(PAWm)は術後有意に低下したが, 平均右房圧(RAm)は術後も7.4±2.3mmHgと比較的高値にとどまり, 心係数(CI)は術後増加の傾向を示したにすぎなかった. 弁のサイズと僧帽弁有効弁口面積では29mm弁, 31mm弁の間に差はなく, 29mm弁では1.16~2.00cm2の大きな幅があった. 全症例の平均は1.71±0.66cm2であり, 圧較差(MVG)は4.40~10.98平均6.68±2.10mmHgであった. 運動負荷によりPAs, LVEDP, CIは有意に上昇し, PAWmは上昇の傾向を示したが, SIは変化なく, 負荷時SIの増加は心拍数によるものであった. これらは生体弁のMVAが狭いことや弁輪が固定されることによるMS状態に由来するものと考えられた. 運動負荷によるMVGの変化は症例により上昇の程度が異なり, また僧帽弁血流量とMVGの間にも規則性は見出せなかった. シネアンギオの所見から, 生体弁の心筋部の存在が製品の均一性を欠き, MVGなどに現われる個体差の一因になるものと考えられた. 生体弁は血行動態的に, 人工弁に比し必ずしも優れておらず, 弁の個体差などの問題点もあり, 低率な血栓塞栓症の発生頻度, 耐用性などを充分に考慮した上で, 手術適応を決定すべきものと考えた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : porcine xenograft, 僧帽弁置換術, 手術成績, 術後血行動態, 弁機能
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