アブストラクト(29巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 各種心筋保護手段の比較検討
Subtitle :
Authors : 渡辺寛, 香西襄, 永岡喜久夫, 武藤高明, 増田政久, 宮内好正*, 伊藤健次郎*
Authors(kana) :
Organization : 松戸市立病院循環器外科, *千葉大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 2
Page : 186-201
Year/Month : 1981 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術中の心筋保護手段について, 下記3群につき実験的, 臨床的に比較検討した. 実験は雑種成犬を用い, 人工心肺使用下体外循環を行い, 60分および120分大動脈遮断について, 心筋温度の変化, 形態学的にはhematoxylin-basic fuchsin picric acid(HBFP)染色による光学的所見と電顕所見から, 心筋代謝は心筋乳酸摂取率と過剰乳酸値から, 心機能はDPTT/TTIと左室機能曲線から検討した. 臨床的には心筋温度および血清酵素値の経時変動について検討した. 第1群, 表面局所冷却法:0°~4℃ハルトマン液で心表面から心筋を冷却. 心筋内層を20℃以下に冷却するのに40分以上を要し, かつ心内操作によって冷却の維持がむずかしく, 60分の阻血時間が限界である. 第2群, 単純冷水冠潅流法:0°~4℃ハルトマン液を大動脈遮断中枢部の穿刺針から注入, 冠動脈床を介して心筋温度を15°~20℃に冷却維持. 心筋内外層を5分以内に均一に20℃以下に冷却, その維持も心内操作に影響されず続けられる. しかし冠潅流中の心筋細胞内浮腫の発生, 120分遮断直後の電顕所見にて心筋構築の乱れ, 左室機能の低下, 人工心肺離脱に際して補助を要したことから120分阻血が限界である. 第3群, 薬物冷水冠潅流法:冷却modified GIKを第2群と同手枝にて注入. 120分大動脈遮断に対して光学的, 電顕的所見はほぼ正常に保たれ, 左室機能の低下も軽度で, 心筋代謝も好気性が保持され, 人工心肺離脱も容易であった. 120分阻血に対して安全に心筋を保護し得た. 冷却に加え, カリウムの速やかな心筋収縮停止による高エネルギー燐酸の保持と冠潅流液組成の心筋内浮腫予防による心筋構築の維持がなされたためと考える. 薬物冷水冠潅流法は長時間大動脈遮断に対して有効な心筋保護効果があり, 臨床的に120分阻血に対して安全な心筋保護手段と考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋保護, 表面局所冷却, 単純冷水冠潅流, 薬物冷水冠潅流, カリウム心停止
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