アブストラクト(29巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ハローファイバー型人工腎臓を用いた体外循環終了後稀釈残液濃縮再利用の研究
Subtitle : 原著
Authors : 吉村博邦, 石原昭
Authors(kana) :
Organization : 北里大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 7
Page : 1117-1129
Year/Month : 1981 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 人工心肺終了後, 回路内に残存する稀釈血液をハローファイバー型人工腎臓(以下HFAKと略す)を用いて限外濾過し容量で50%に濃縮することにより, ヘマトクリット40%程度の濃縮血液として患者に返却する装置を作成し, 基礎実験ののち臨床30例の開心術症例に応用した. HFAKには600~700mm/Hgの陰圧を加え, HFAKの回路流量を220ml/分とした. 200mlの濃縮血液を作成するのに要する時間は, 旭メディカル社製HFK-11型で約11分, 東レ社製B-1型で約3分20秒であった. 臨床30例の疾患の内訳は, ASD18例, VSD7例, PS2例, MS2例, T/F1例で, 30例の体外循環終了時の回路内残液量は1,300±261mlであり, この残存稀釈血液から本法を用いて650±132mlの濃縮血液を作成した. 濃縮による血液性状の変化は, 赤血球数, ヘモグロビン量, ヘマトクリット値, 血清総蛋白量などはほぼ満足すべき値まで濃縮された. 血清電解質, 尿素窒素, クレアチニン, 血小板数, CPC法による動的赤血球膜抵抗などは, 濃縮前後でほとんど不変ないしは極く軽度の増減を示した. 10例における51Crを用いた平均赤血球寿命は21.5±5.98日であり, 平均値では正常範囲である20日以上を示した. 本法の応用により, 従来の方法による体外循環を行った対照群に比べ1例当たり平均1,020mlの輸血血液の節減がえられた. 手術直後および術後3週目の患者の臨床血液所見を対照群と比較すると, 手術直後の値ではヘマトクリット値, ヘモグロビン量, 血清総蛋白量などで対照群が優り, 逆に血小板数, ビリルビン値などで濃縮群が優っていた. 術後3週目の値では両群にほとんど有意差はなかった. 遊離ヘモグロビンが濃縮されるのが唯一の欠点ともいえるが, 濃縮後の遊離ヘモグロビンの平均値は保存血と比べやや高い程度であり, 臨床的にはほとんど問題ないと思われた. 以上より, 本法は従来の遠沈法による血液の濃縮ではほとんど失われるとされる血清蛋白および血小板を失うことなく濃縮することが可能であり, 体外循環の補助手段として輸血血液の節減, 無血体外循環の適応拡大に極めて有用な方法と思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 体外循環, 血液濃縮, ハローファイバー型人工腎臓, 限外濾過, 同種輸血
このページの一番上へ