アブストラクト(29巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : リング付人工血管移植法の実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 稲田洋, 寺本滋
Authors(kana) :
Organization : 岡山大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 8
Page : 1272-1285
Year/Month : 1981 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 血管吻合術においてリングを利用した無縫合法は古くより種々考案され, 一部は臨床応用されていたが, 批判も多く, 顧みられなくなった. しかし, 最近解離性大動脈瘤に対してリング付人工血管移植術が行われ優れた成績が報告されるとともに, その簡単な手技とあいまって無縫合法が再び注目されるようになった. 著者はリング付人工血管移植法の臨床応用のため, その基礎的研究として下記の実験を行った. 内径8mm, 長さ7mmのstainless steelのリングを両端に装着したリング付人工血管を成犬29頭の胸部下行大動脈に移植し, 術後1, 3, 6, 8, 12ヵ月にそれぞれ5, 5, 5, 3, 4頭ずつ計22頭に血管造影を行った後, 屠殺・解剖を施行し, 移植片の肉眼的, 組織学的検討を行った. 血管造影では人工血管は全例良く開存し, 27頭より採取した移植片の吻合部54ヵ所における宿主大動脈中膜弾性線維の変化を, リング固定結紮糸直下とそれ以外のリング接触面でそれぞれ検討したところ, 中膜弾性線維の完全断裂が前者で1ヵ所, 後者で6ヵ所にみられた. リング先端部と宿主大動脈内面との癒合は良好:34ヵ所, 不良:8ヵ所, 判定不能:12ヵ所であった. 吻合部宿主大動脈の中膜弾性線維に完全断裂が少数ながらみられたことは, 術後1ヵ月死亡の1頭に吻合部破裂がみられたことと合わせ本法における吻合部動脈瘤形成, 破裂の可能性を示すものと考えられる. しかし, 急性解離性大動脈瘤においては, その血行再建は困難で, 手術成績も不良であることを考慮すると, 手技の簡単な本法は臨床応用が可能で, また通常の胸部大動脈瘤においても, 縫合の非常に困難な症例や手術時間の短縮を要する症例には応用すべき術式と考えられる. ただ本法の臨床応用に際しては吻合部のwrappingを行うなど, 何らかの血管壁補強を計る必要があると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 無縫合法, リング付人工血管移植法, 解離性大動脈瘤, wrapping
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