アブストラクト(29巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Blalock-Taussig手術の血行動態に関する研究とくに動物実験を中心として
Subtitle : 原著
Authors : 入沢敬夫, 小林稔, 中村千春, 片桐幹夫, 佐藤徹, 今井高二, 石原良, 折田博之, 佐藤佳樹, 西村和典, 白田保, 白岩邦俊, 鷲尾正彦
Authors(kana) :
Organization : 山形大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 9
Page : 1409-1416
Year/Month : 1981 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Blalock-Taussig手術(B-T手術)は安全かつ効果的な術式とされているが, 当然のことながら本術後には短絡に起因する左心系への負荷が招来される. この短絡が心臓に及ぼす影響についての研究は少ないので, 臨床的には術中の短絡量と術後の心胸比の変動を, 実験的にはB-T手術による短絡作成犬を用い, 遠隔期における短絡による血行動態の変動を検討した. 臨床成績から, 術後の心胸比の変化が軽微であった症例では鎖骨下動脈(S動脈)外径は3~3.5mm(体重8kg)で, 短絡量は平均13.0cc/kg/分であった. 心胸比の変化が10%以上であった症例ではS動脈外径は5~6mm(体重14kg)で, 短絡量は平均59.8cc/kg/分であった. この成績はS動脈の太さとB-T手術の短絡量, および短絡量と術後の心胸比の変動が密接に関連することを示し, 心胸比の増加は左室の拡張を反映するものと推測された. 実験成績から, S動脈の太さと短絡量とは密接に関連することを認めたが, 短絡量と血行動態についてみると, 肺動脈圧の上昇は軽微であった. 右室拍出量および右室仕事量は短絡の増加に伴いむしろ減少する傾向を示し, 短絡率70%以上では右室拍出量は平均0.59倍, 右室仕事量は平均0.81倍と明らかに減少した. 一方短絡の増加に伴い大動脈圧は対応して下降し, 左室拍出量および左室仕事量は相応に増加した. 短絡率70%以上では大動脈平均圧は20%下降し, 左室拍出量は平均2.1倍, 左室仕事量は平均1.7倍に増加したが, プラトー状態を示し, 多量の短絡は左室への過剰な容量負荷になりうるものと推測された. B-T手術では十分な手術効果はS動脈の太い部分での短絡形成により得られる訳であるが, 臨床的ならびに実験的成績から体重10kg位の症例ではS動脈は外径5mm(内径4mm)であれば効果的な短絡量が得られ, 血行動態的にも許容されるものと推測された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Blalock-Taussig手術, 短絡量, 心胸比, 容量負荷, 心仕事量
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