アブストラクト(29巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 長期ECMO下動物の生体観察と肺組織所見
Subtitle : 原著
Authors : 山城健一, 野上俊光, 津野恭司, 寺崎秀則, 森岡亨
Authors(kana) :
Organization : 熊本大学医学部麻酔科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 9
Page : 1445-1451
Year/Month : 1981 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 重症急性呼吸不全の治療としてECMOが注目されている. そこで, 動物(イヌ, ヒツジ, ヤギ, 計29頭)を用いて麻酔下および無麻酔有意識下にKolobow式腹型人工肺によるV-AバイパスのECMOを行い, ECMO管理中の事故がなく, ECMO離脱後自力で生存しえ, 比較的純粋にECMOのみの影響が現われていると思われる動物のなかからECMO時間が17.3時間から175時間までに及ぶ10頭を対象とし, ECMO自体の影響を生体観察し, 死後, 肺の組織学的検討を行った. 生体観察:イヌでは麻酔下にECMOを行ったところ麻酔の影響のためかECMO後の全身状態の回復が遅れた. ヒツジ, ヤギでは無麻酔下の管理が可能であり, またその方がECMO中の全身状態が良好であった. それでもECMO5~6日以上になると, そのころから全身状態悪化傾向がみられた. しかし, 麻酔の影響がないためかECMO後の回復は早かった. 肺組織所見;全例に小動脈周囲の浮腫, 間質の肥厚, I型肺胞上皮細胞の空胞化, 一部の例に肺胞腔内への出血, 水腫, 毛細血管内皮細胞の傷害, I型肺胞上皮細胞の基底膜からの離解がみられた. これらの変化は一般的に上葉より下葉に強かった. II型肺胞上皮細胞には全例変化を認めなかった. ECMO施行時間と肺組織所見の程度との相関性ははっきりしなかった. 生体観察と肺組織所見から, 1週間程度の長期にわたっても, ECMO自体による肺傷害はpermeability typeの間質性肺水腫を主体とし, 今まで報告されている他の型式の人工肺を用いた体外循環による肺傷害より軽度であると思われた. ただし長時間になると症状の悪化からみて肺以外の全身的影響も考えられる. ECMOは, その必要が止み次第, 早めに中止すべきである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ECMO, 長期補助循環, 体外循環後肺傷害, 肺微細構造
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