アブストラクト(29巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 静脈移植の実験的研究 Glutaraldehyde処理同種気管─tracheal biograft─の応用
Subtitle : 原著
Authors : 四津良平
Authors(kana) :
Organization : 慶応義塾大学医学部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 9
Page : 1459-1469
Year/Month : 1981 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 静脈移植における代用血管は, 臨床的に満足できるものはなく, その移植成績は極めて不良である. そこで移植材料として生体組織である気管に着目し, これを0.2%glutaraldehydeで処理し, 生体組織血管─tracheal biograft─としての可能性を検討した. 移植実験は雑種犬20頭を用い, 上大静脈に同種tracheal biograftを移植した. 移植片は内径12~15mm, 長さ3~5cmとし, 吻合に際して奇静脈は全例結紮切離した. 観察期間は最長3年2ヵ月で経時的に静脈造影を行い開存性を検討した. 犠牲解剖後の摘出標本について, 肉眼的, 光顕的, 軟線レ線的に, 一部は走査電顕にて検討した. 結果は全例が開存していた. 肉眼的に, 移植片内面は薄い仮性内膜が均一に覆い, 吻合部にはpannusの形成が認められた. 仮性内膜のgraftへの固着は安定していた. 組織学的にみると, 表層には一層の内皮様細胞が連続して認められた. 走査電顕所見は, 移植後2年の標本で, 扁平, 表面平滑な内皮細胞が移植片全長をくまなく覆っていた. 移植片自体の変形は1例に気管膜様部の拘縮を認めたほか, 著明な変形, 断裂, 粗鬆化は認められなかった, しかし3年2ヵ月の最長観察例で, 軟線レ線上気管膜様部の一部に明らかな石灰化が認められた. 本実験によりglutaraldehyde処理同種気管─tracheal biograft─は, 短期的には静脈移植の有力な材料と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : tracheal biograft, 静脈移植, 代用血管, 生体組織血管, glutaraldehyde処理
このページの一番上へ