Abstract : |
僧帽弁狭窄症に対し, 断層心エコー図により術前の評価, 手術術式の選択を的確に行うため本研究を行った. 僧帽弁狭窄症28例を対象とし, 断層心エコー図所見とSellors分類による手術時所見, 手術術式を対比検討した. 1. 術前, 弁口レベルにおける短軸断層図により求めた僧帽弁口面積と用指手術時実測値との間にはr=0.67の相関がみられた. また, 交連切開術を施行した16例では手術時開大した弁口面積と術後断層図により求めた弁口面積との間にはr=0.64の相関がみられた. 2. 僧帽弁の石灰化については, エコー信号処理回路をできるだけ一定とし, gain controlのみ変換し, 心外膜エコー強度と比較して判定を行った. 28例中11例に石灰化(+)と判定し, そのうち10例(91%)に石灰化が手術時に確認された. 3. 長軸断層図拡張期における最大振幅と収縮期における弁輪径に対する前尖の比率を求め, 前者を弁の柔軟性, 可動性の指標とし, 後者を弁下部病変の指標とした. 後者では, Sellors I型II型とIII型との間にp<0.05の有意差を認めた. 最大振幅18mm以下, 弁輪径に対する前尖の比率0.50以下は人工弁置換術の適応と考えられた. 4. 局所病変に注目し, 弁下部病変の評価として前交連側, 後交連側長軸断層図によりエコーパターンにて弁下部病変の重症度の評価を行った. 手術時所見とよく一致し, 病変部位, 程度を的確に診断評価することができた. 手術術式の選択に関しては, 断層エコー分類にて前交連側, 後交連側がそれぞれI型II型では交連切開術の適応である. どちらか1側がIV型であれば, 人工弁置換術の適応となる. III型では, 弁下形成術を加えれば自己弁温存術式の可能な症例も多いと考えられた. |