アブストラクト(29巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Prostaglandin E1投与時の開心術後急性期における血行動態
Subtitle : 原著
Authors : 水川豊, 弥政洋太郎
Authors(kana) :
Organization : 名古屋大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 10
Page : 1603-1615
Year/Month : 1981 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 多種多彩な薬理作用を示すprostaglandin E1(PGE1)を体外循環中より引き続き術後急性期に使用し, その心血管系に及ぼす効果を対照群との間で比較検討した. 対象症例は45例でMRの2症例を除き先天性心疾患症例であった. これを軽症例群(A群)とdopamineの使用を要した重症例群(B群)に分け, さらにそれぞれPGE1を術後3日間0.02μg/kg/minで経静脈内に投与した群(PGE1群)と非投与群(対照群)に分けた. 術直後, 術後2時間, 4時間, 18時間, 42時間の5回各血行力学的パラメーターについて検討した. 平均動脈圧はA群でPGE1群が経過中平均-9%(p<0.01), B群で-3%(NS)と低値を示し, その血管拡張作用を見せた. 中心静脈圧はA群では差を見なかったが, B群では-21%(p<0.01)と著名に低値を示し, PGE1の動脈系血管の拡張と同時に静脈系血管の拡張作用も示した. 心係数と一回拍出係数はA群で+11%(p<0.05), +3%(NS), B群で+7%(p<0.01), +10%(p<0.01)とPGE1群が高値を示し, 末梢血管抵抗係数でもA群で-23%(p<0.01), B群で-8%(p<0.05)とPGE1群が低値をとった. PGE1の使用による心拍出量増加, 末梢循環の改善および左心室仕事量の軽減効果を見た. 肺循環系においては, 平均肺動脈圧はA群で-19%(p<0.01), B群で-3%(NS), 全肺血管抵抗係数はA群で-36%(p<0.01), B群で-12%(NS)とPGE1群が低値を示し, 肺血管床における拡張作用を示した. これにより肺循環の改善と右心室仕事量の軽減を見ることができた. また血液ガス動態の面でも動静脈血酸素含有量較差の減少と静脈血酸素分圧の上昇を見, 末梢組織における酸素供給需要バランスの改善を得た. 末梢深部温の面でも, PGE1群は深部温較差は小さくPGE1の末梢循環の改善作用を見た. 尿量についてもPGE1群は対照群より早期より高値を示し, PGE1の腎血管拡張作用による効果とPGE1自体の持つ利尿作用を示した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Prostaglandin E1, 血管拡張剤, 開心術後急性期の血行動態, 末梢循環
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