アブストラクト(29巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心臓リンパの研究─特に虚血心について─
Subtitle : 原著
Authors : 山下正文, 秋田八年
Authors(kana) :
Organization : 鹿児島大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 10
Page : 1635-1645
Year/Month : 1981 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心臓リンパは心臓の病態生理をよく反映すると考えられる. 実験では特に心臓のglobal ischemiaが心臓リンパにどのような影響を及ぼすかを中心に, 他の病態との比較を交えて検討した. 実験には犬を用い, 心臓リンパを心臓リンパ節輸入リンパ管から採取し, 流量および組成を検索した. 実験群は次の5群である. 1)麻酔下に開胸のみを行ったcontrol群(11頭), 2)体外循環下に左室ventを開放した拍動心群(10頭:BE群), 3)体外循環下電気的心室細動心群(10頭:VF群), 4)常温体外循環下に60分の大動脈clamp・冠血行遮断後declampし, 再潅流を1時間行った群(10頭:60分群), 5)常温体外循環下の冠血行遮断を90分とし再潅流を1時間行った群(10頭:90分群). control群の心臓リンパ流量は経時的に一定で, 2時間後の累積値は2.0±0.3(SE)mlであった. BE群では1時間目まではcontrol群をやや下回る一定した流量を示したが以後漸増し, 2時間後には3.3±0.5(SE)mlと実験群中最大の値を示した. VF群では心室細動開始直後の流量は減少したが次第に増加し, 2時間後には2.5±0.4(SE)mlとcontrol群を上まわった. 冠血行遮断60分群では遮断中のリンパ流出はほとんどみられず, 解除後急増して2時間後には2.4±0.5(SE)mlとなった. 冠血行遮断90分群ではその後の60分の再潅流を含め結局1.5±0.2(SE)mlと全群中の最小値を示した. また再潅流1時間の間に得られた流量も60分群2.3±0.4(SE)mlに比し, 90分群では1.3±0.2(SE)mlと減少していた. リンパ液の組成には各群間で有意差がみられなかった. 経時的な心臓リンパの流量パターンは各群の病態生理によく対応しており, 心臓の状態を知る有力な指標となると思われた. 特に冠血行遮断90分群で遮断解除後のリンパ流量が60分群よりも減少したことで, その背景に細胞傷害, reperfusion injury等を想定することができ, 常温global ischemiaの許容時間に新たな視点からの興味ある情報が得られた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心臓リンパ, global ischemia, 心筋浮腫, reperfusion injury
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