Abstract : |
大動脈内バルーンパンピング(IABP)の心機能に及ぼす影響について41頭の犬を用いて実験的検討を行い, さらに本法を23例の臨床応用を行いその効果, 結果を検討した. 1. バルーンの種類による血行動態の検討では左心補助効果はdouble balloonがtriple balloonより優れた傾向にあり, 末梢循環ではtriple balloonがより効果的であった. 2. バルーン挿入法による血行動態の検討では, 左心補助効果はupstream pumpingがやや優れており, downstream pumpingではその効果がやや劣るが, 末梢循環の改善は幾分優っていた. 3. 心筋局所に及ぼす影響についての検討では, 心表面STマッピングではIABPによってST上昇の改善がみられ本法の心筋虚血に対する効果が示された. また水素ガスクリアランス法による局所心筋血流量測定では虚血中心部ではその効果が乏しく, 虚血境界域においての血流増加が明らかであった. 4. 心筋虚血に陥った直後にみられた左室前壁の興奮伝導遅延がIABPによって改善を示し, さらに正常伝導パターンにまで回復がみられた. 5. 臨床的には23例の重症左心不全に本法を応用し, 16例(70%)を救命しえた. これらのうち原性ショック例には不良であったが, 弁置換例には有効で, とくにA-Cバイパス例に著効を示した. また術前左心機能低下例7例に術中よりの予防的使用を, 大腿動脈挿入不能例3例には大動脈弓アプローチを行い著効を得た. |