アブストラクト(29巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後の心機能の検討 -心房ペーシング頻脈負荷による心予備力の評価-
Subtitle : 原著
Authors : 木曽昭光, 勝村達喜
Authors(kana) :
Organization : 川崎医科大学胸部心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 11
Page : 1743-1752
Year/Month : 1981 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術後の心機能を評価する目的で各種心疾患44例に対して術後心房ペーシング頻脈負荷を加えてその心筋予備力を推定した. ペーシングは100/min, 120/min, 140/minの脈拍数で10分間行い, 術後6時間目, 1日目, 3日目と経時的に負荷を加えた. その際同時にSwan Ganzカテーテルを用いて肺動脈楔入圧と心拍出量を求め, また心機図よりET/PEPを求めた. すなわち頻脈負荷に伴う循環動態の変化を観察し, さらに心機能曲線を求めて心予備力を推定し, 各群間で比較検討した. 結果は次の通りである. 1. ASD・VSD群:術直後の心機能の低下は軽度で, その後速やかに回復した. 頻脈負荷では120/minまでは心拍出量の増加などポンプ機能は改善され, 心機能曲線も上方に向かうなど心機能予備力はよく保たれていた. 2. MS開心交連切開術群:術直後は心機能は中等度に低下し3日間で変化しなかった. 頻脈負荷時には心拍出量は増加せず, また140/minの脈拍数では肺動脈楔入圧の上昇がみられ, 心機能曲線も右方に水平に近く心機能予備力は少ないものと推定された. 3. 弁置換群:術直後は低血圧, 低心拍出量状態にあり心機能は4群中最も大きく低下した. 頻脈負荷では120/min以上の脈拍数で心拍出量とET/PEPの低下, 肺動脈楔入圧の上昇などポンプ機能は著しく低下し, また心機能曲線は右下方に向かい, 心機能予備力は極めて乏しいものと推察された. 4. ACバイパス群:術後1日目以後では120/minまでは心拍出量の軽度増加など頻脈負荷によってポンプ機能は軽度に改善され, 心機能曲線は右上方に向かい, 心機能予備力はASD・VSD群とMS開心交連切開術群の中間にあると思われた. 5. 開心術後経時的に行った心房ペーシング頻脈負荷試験は合併症のない安全な検査法であり, 心機能曲線を求めて総合的な心機能の評価ができ, 心機能予備力の推定, 重症例でのLOSの早期発見とその対策および治療効果の判定など術後管理の面で有用であった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 開心術後心機能, 心機能予備力, 心房ペーシング頻脈負荷, 心機能曲線
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