アブストラクト(29巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁狭窄症の重症度の検討
Subtitle : 原著
Authors : 中井勲*, 浅野孝治*, 畑沢幸雄*, 青山安治*, 岡村龍一郎*, 徳島武*, 野津長*, 原宏*, 森透*, 中村和夫**
Authors(kana) :
Organization : *鳥取大学医学部第2外科, **神戸大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 12
Page : 1856-1862
Year/Month : 1981 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 教室において手術が施行された僧帽弁狭窄症44例の血行動態について検討を加えた. 症例をIa群(MS)17例, Ib群(MS+TI)8例, IIa群(MS+PH)11例, IIb群(MS+TI+PH)8例の4群にわけて検討した. 尚PHは収縮期圧50mmHg以上とした. 術式は僧帽弁交連切開術32例, 僧帽弁置換術12例, 三尖弁逆流に対しては, 弁輪形成術15例, 弁置換術1例であった. 手術死亡は3例, 死亡率6.8%でいずれもIb群に属する症例であった. 術前検査では, 三尖弁の逆流を合併していたb群がa群に比べ高齢でかつ病悩期間が長かったが有意ではなかった. しかし術前心電図で心房細動はIb群8例中7例(88%), IIb群8例中6例(75%)と高頻度で, また心胸廓比もb群は60%以上でa群に比べ増大していた. 術前の心拍出量はIa>IIa>IIb>Ibの順に低く, Ib群は2.05l/min/m2と極端に低下し, 中でも死亡した3例の平均心拍出量は1.74l/min/m2と更に同値であった. この傾向は術後急性期も引き続きみられ, Ib群は術後3時間目には2.08l/min/m2と術前値よりさらに減少し(生存例の術前の平均心拍出量は2.19l/min/m2), 72時間後でも2.29l/min/m2であった. これは術後の左房圧, 肺動脈圧や中心静脈圧の推移からみて僧帽弁機能障害の残存や循環血液量の差が原因とは考え難く, むしろIb群は中心静脈圧は高いのに肺動脈圧は他の群に比べ低く, 右心系の障害が疑われた. 術後6ヵ月における心胸廓比の改善度はb群, 特にIb群の改善度は少なく, また遠隔期(37.7ヵ月)におけるNYHA分類の推移および自覚症状の改善など大多数例で満足すべき結果を得たが, やはりIb群は他の群に比べその改善は劣っていた. 以上の点より, 肺動脈収縮期圧が50mmHg以下で僧帽弁狭窄症に三尖弁閉鎖不全が合併した場合, 両弁を修復してもこれが直ちに心拍出量の増大につながらず, ひいては術後の改善にも影響したと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁狭窄症, 三尖弁閉鎖不全症, 肺高血圧症, 右心機能
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