アブストラクト(29巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 偽性総動脈幹症に対する外科治療成績
Subtitle : 原著
Authors : 島崎靖久, 北村惣一郎, 大西健二, 広瀬一, 松田暉, 中埜粛, 賀来克彦, 白倉良太, 奥田彰洋, 八木原俊克, 森本静夫*, 小川實**, 森透***, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科, *大阪大学医学部放射線科, **大阪大学医学部小児科, ***鳥取大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 12
Page : 1890-1897
Year/Month : 1981 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 21例の偽性総動脈幹症の根治手術例を経験し, 9例を手術にて失った(43%), しかし, 遠隔死亡は認めなかった. 手術方式は弁閉鎖に対してはパッチによる右室流出路形成術4例(死亡0), 他はホモグラフトあるいはHancock弁付人工血管による肺動脈幹再建術が17例(死亡9)であった. 手術死亡原因は術後の気道出血2例, 低形成肺動脈3例, 低心拍出量症候群, 長時間体外循環となりこのために出血が制御できなかったもの, 肺血管の閉塞性病変がそれぞれ1例であった. この他に巨大側副気管支動脈が正しく結紮されずに肺水腫を来して死亡したもの1例あった. 気道出血の2例はいずれも術前から側副血行路が発達しており, 特に気管支周囲に特異的に血管増生が認められていた. 低形成肺動脈例は3例ともに術後の右室/左室圧比(RV/LV)が, 1.0以上となり台上死したが, 左右肺動脈平均断面積(PA area)/正常右肺動脈断面積(N-rPA area)の比が0.20未満であった. これが0.20以上例で生存例を得, 生存例ではRV/LVは0.80未満であった. この断面積比と動脈血酸素飽和度の間には, 巨大側副気管支動脈合併5例を除いた13例の検討ではr=0.635, p<0.02の直線相関を認めた. 巨大側副気管支動脈の合併は5例に認め, うち3例を低形成肺動脈のために, 1例を肺水腫のために失った. 2例に低形成肺動脈を体肺動脈短絡術により, 十分発育させてから二期的に根治術を施行した. 1例を肺血管の閉塞性病変にて失ったが, 他の1例では巨大側副気管支動脈の結紮を含む根治術に成功した. 以上から本症では肺動脈の低形成とこれに伴う側副血行路に留意し, 低形成肺動脈合併例には肺動脈の発育を促してからの二期的根治術を計画し, また側副血行路は気道系との関係と血流量に注意して, これが多ければ根治術に際して処置をすることが必要であろうと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 偽性総動脈幹症, 低形成肺動脈, 巨大側副気管支動脈, 左右肺動脈平均断面積, 根治手術適応
このページの一番上へ