アブストラクト(30巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心筋組織ガス分圧測定による冷却心停止法の臨床的実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 須藤憲一, 三枝正裕
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 1
Page : 1-13
Year/Month : 1982 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 冷却心停止法下の心筋代謝については, いまだ不明な点が多い. 我々は臨床例及び犬を使用した動物実験により, 医用質量分析計を使用し, 心筋組織ガス分圧を測定することによりこれを検討した. 測定方法はテフロンカテーテルを左心室心尖部より心筋内に挿入し, 心筋組織pO2及びpCO2を連続記録した. 20mEq/LのK+を含む冷却心停止液を臨床例及び動物実験のA, B群では初回量20ml/kg, 20分毎に10ml/kg注入し, 動物実験のA群では心筋温が10~15℃に, B, C群では20~25℃になるように調節した. 臨床例の心筋温は14.1±2.0℃であった. 臨床例(10例)の心蘇生は全例良好であった. 遮断中のpCO2上昇速度は0.25mmHg/分と低値に保たれ, pO2も比較的高値に保たれていた. 遮断解除後はpCO2は一過性に上昇し, 解除後15分で下降を開始し, 心拍再開5分後には遮断開始時以下の値に戻った. 動物実験は3群に分け, C群は心筋温を20~25℃に保ち初回のみ心停止液を注入し, pCO2がプラトーになった時点で遮断を解除した. なおA, B群の遮断時間は90分とした. pCO2の上昇速度はA群では0.36±0.16mmHg/分, B群では0.71±0.66mmHg/分, C群では1.63±0.60mmHg/分であった. 解除後のpCO2の変化はA群では全例が一過性の上昇を示し, C群はすべて上昇せず, B群ではその中間の値を示した. pCO2の回復率は遮断解除後20分でA群は130±35%, C群は175±82%, B群はその中間の値を示した. pO2は群間での有意差はみられなかった. 以上の結果より, 現在我々が行っている冷却心停止法は心筋を低温に保ち, 好気的及び嫌気的代謝を下げ, また頻回注入により乳酸をwashoutし, pCO2の上昇を防ぐことができるためほぼ満足すべきものであった. 心筋温20~25℃では心筋保護は確実とは言えず, 1回注入のみでは不満足なことも記明された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋組織ガス分圧, 冷却心停止法, 医用質量分析計, 心筋保護法
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