アブストラクト(30巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環におけるプロスタグランディンI2の効果─実験的検討─
Subtitle : 原著
Authors : 松倉裕美, 竹田治土, 川上敏晃, 田辺達三
Authors(kana) :
Organization : 北海道大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 2
Page : 164-171
Year/Month : 1982 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : プロスタグランディンE1には血小板保護作用と血管拡張作用があるとされ, 最近体外循環に応用が開始されている. 我々はプロスタグランディンE1より作用が強力で肺循環で失活されず, 作用時間が短く調節が容易とされているプロスタグランディンI2(PGI2)の臨床応用を目的に実験的検討を行った. 雑種成犬13頭を用いラクトリンガー40%希釈血完全体外循環を80ml/kg/分の流量で1時間施行した. 実験開始時ヘパリン2mg/kgを静注し, 体外循環開始直前にPGI2 50mg/kgを15分で静注し, 体外循環開始後は1μg/kg/分のPGI2を回路内へ点滴し, 体外循環終了後プロタミン4mg/kgでヘパリンを中和したPGI2群(7頭)とPGI2を全く投与しなかった対照群(6頭)において循環動態と血小板機能を検討した. PGI2群では体外循環開始直後から大動脈収縮期圧は低下し, 体外循環30分で対照群の40%, 60分で51%(ともにp<0.01)に低下したが, PGI2投与終了後両群の有意差は消失した. 全末梢血管抵抗単位は体外循環30分で対照群の53%(p<0.01), 60分で48%(p<0.05)と低下し, 大動脈収縮期圧の低下はPGI2の末梢血管拡散作用によるものであった. ADPによる血小板凝集能は対照群では体外循環開始後次第に低下し, 体外循環終了後は体外循環前値の33%に低下したが, PGI2群では全く低下を認めず, 体外循環終了後両群間に有意の差がみられた(p<0.05). 走査電子顕微鏡による血小板形態の検討では, 対照群は血小板外殻をみるのみであったが, PGI2群では偽足を出し活動期にある血小板が大部分であり, PGI2は血小板機能とともに形態をも保護する作用が認められた. なお溶血は両群間に差を認めなかった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : プロスタグランディンI2, 体外循環, 血小板凝集能, 末梢血管抵抗
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