アブストラクト(30巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術時の静脈カテーテル挿入による合併症とその対策
Subtitle : 原著
Authors : 須藤憲一, 上野明, 古瀬彰, 松永仁, 三枝正裕
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 2
Page : 180-187
Year/Month : 1982 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術に際し種々の目的で行う静脈カテーテル挿入法は, ひろく用いられている重要な手段であり, 特に最近は鎖骨下静脈あるいは内頚静脈の経皮穿刺法が多く用いられている. しかしながらこれに伴う合併症の発生も決して稀でなく, 本法を施行する際には十分な注意を払うことが必要である. 当科では1973年1月より1980年12月までに642例の開心術が行なわれたが, このうち606例に757本の静脈カテーテルを麻酔導入後挿入した. 挿入方法は, 大伏在静脈切開法が341本, 大腿静脈穿刺法が190本, 鎖骨下静脈穿刺法が109本, 肘静脈穿刺法が92本, 内頚静脈穿刺法が21本, 肘静脈切開法が4本である. このうち10例に合併症の発生がみられた. その内訳は大伏在静脈切開法5例(1.47%), 鎖骨下静脈穿刺法が4例(3.67%), 内頚静脈穿刺法が1例(4.76%)であり, 大腿静脈穿刺法, 肘静脈穿刺, 切開法では合併症の発生はみられなかった. これらの合併症のうちmajor complicationは5例で, 鎖骨下静脈および内頚静脈穿刺法で発生しており, いずれも挿入時に発生したものと思われる. このうち2例に対しては再手術を行っている. 死亡例はみられなかった. minor complicationは5例で, いずれも挿入後に発生した血栓性静脈炎で大伏在静脈切開法で発生しているが, すべて軽症であり, 保存的療法で治癒している. 鎖骨下静脈および内頚静脈穿刺群と大腿静脈穿刺群とでは5%以下の危険率で挿入時合併症の発生率に有意の差がみられたが, 挿入後合併症の発生率に関しては, 大伏在静脈切開群と鎖骨下静脈および内頚静脈穿刺群との間には推計学的に有意の差はみられなかった. これらの結果(合併症の発生率および重篤度)より, 現在我々はまず大腿静脈穿刺法を試み, 重症患者で他にもう一本必要な場合にはdouble lumen catheterを挿入するか, または肘静脈穿刺法を追加することにより, 合併症の発生の予防に努めている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 経皮静脈穿刺法, 静脈カテーテル挿入合併症, 鎖骨下動静脈瘻, 乳糜胸, 縦隔血腫
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