Abstract : |
昭和40年より昭和56年3月末日までに, 当教室でEbstein病に対して三尖弁置換手術を施行した8症例について, 手術成績, 術前後のヘモグロビン値, 心胸郭比, 心電図変化, NYHA機能分類, 遠隔死亡原因, 遠隔成績について検討を行った. 手術成績では手術死亡は早期の1例を術直後に完全房室ブロックにて失ったが, 他の7例では術後1年~15年(平均7年)の生存を得ている. 術後成績ではヘモグロビン値, 右房平均圧, 動脈血酸素飽和度および心胸廓比において有意な改善を認めた. 人工弁置換手術後の遠隔死亡は3例で, 死因はリズム死(術後5年), 心不全(術後2年), 肺栓塞(術後2年6ヵ月)であった. これらの症例も早期にペースメーカー装着と抗凝血療法が施行されていれば延命可能な症例かと思われる. 現在, 生存例は4例で, 術後1年, 10年, 13年および15年を経過し, NYHA機能分類でI度3例, II度1例であり, 10年以上の生存は3例である. 本症に対する外科治療の適応は心不全の出現, チアノーゼの増強, 心胸廓比の増大(60%以上)の徴候の1つでも認められる症例は手術対象と考える. また, 手術々式としては各種の姑息的手術では十分な症状改善と長期生存は期待できない. 三尖弁挙上法は小児期で弁機能が良好な症例で第1選択となろう. 人工弁置換術は本症の外科治療で, 術後の不整脈と抗凝血療法に対処すれば長期生存が得られる術式と考える. |