アブストラクト(30巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 広汎性解離性大動脈瘤に対する合成線繊Mesh Wrapping治療の研究
Subtitle : 原著
Authors : 岡部英男, 三枝正裕
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 3
Page : 295-305
Year/Month : 1982 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 解離性大動脈瘤の中で, 限局性解離に対しては, 大動脈瘤切除, 人工血管移植などが行われ, ほぼ根治手術が可能であり, 手術成績及び遠隔成績も優れている. しかしながら広汎性解離については, 数多くの問題が残されており, 従来の解離のEntry部切除, 末梢解離腔閉鎖, 人工血管移植術の遠隔成績は, 必ずしも良好でない. この理由として広汎性解離は, 1)動脈瘤部で切離し, その弱い動脈壁と人工血管吻合を行わざるを得ない場合が多い. 2)Re-entry部が多数例もあり, 真腔での吻合は必ずしも意味がない. 3)全大動脈再建は侵襲が大きい, などがあげられる. これらの点を勘案して, 著者は, 現在行われている手術々式とは, 全く異なった方法として, かつて行われた動脈瘤Wrappingの方法が, この場合最も適した術式であると考えるに至った. これを証明する目的で, 雑種成犬を用いて外科的に大動脈解離を作製し, 1ヵ月後に, この部位の大動脈瘤化を認めた. 引き続き大動脈解離部にWrappingを行った. Wrappingの材料として, 特に合成線維Mesh(Dacron Mesh又はTeflon Mesh)を選び, 解離腔の破裂や進展に対する防止の可能性およびWrappingの強さの程度などの諸点について検索し, 更に本手術施行後, Mesh Wrappingの効果が認められるまでの時期について検討した. その結果, Mesh Wrapping後1ヵ月以上例では充分その効果は期待され, またWrappingの材料としては, Dacron Meshの方がTeflon Meshより生体反応の面からみて優れていると結論できた. この動物実験により, 本術式が広汎性解離性大動脈瘤に対する手術々式として充分に満足すべき効果をおさめ得ると考えられたため, 臨床例に応用した. 切迫破裂例を除いた広汎性解離性大動脈瘤8例に対し, 解離部のMesh Wrappingを行い, 7例の最長5年に及ぶ遠隔成績では, いずれも解離の増大, 進展は認められず, 本法が広汎性解離性大動脈瘤の新しい手術法として意義あるものと考えた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 広汎性解離性大動脈瘤, 合成線繊, Dacron Mesh, Teflon Mesh, Mesh Wrapping
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