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安全かつ確実な術中心筋保護法の確立を目的として, 大動脈弁置換術を施行した52症例に対して逆行性冠潅流法の臨床的応用を試み, 主として急性期心筋保護効果の面から従来の選択的順行性血液冠潅流法(24例)と比較検討を行った. 1. 逆行性冠潅流法は完全体外循環下に大動脈遮断と同時にIce slushにて局所冷却を行った後, 右房を切開してFoleyカテーテルを冠静脈洞に挿入固定し, 同部から60～80cmの高さより潅流液を落差注入した. 2. 逆行性潅流液は冷却希釈血液(28例), 冷却希釈血液+心停止液(14例), St. Thomas Hospital液(10例)の3種類を使用したが, 今回の検討でみる限り各潅流液間に心筋保護効果の面で差を認めず, いずれも臨床的に優れた結果をもたらした. 3. 逆行性冠潅流法では選択的順行性血液冠潅流法に比して体外循環離脱時の心蘇生が容易であった. また, 術後カテコールアミン使用例数や心室性不整脈の発生頻度は著しい減少を示し, 心筋障害に直接起因する死亡症例を認めなかった. 4. 逆行性冠潅流法は局所冷却法を併用することによって肥大心筋においても均等かつ速やかに冷却することが可能であった. 5. 逆行性冠潅流法は特に大動脈基部切開を要する手術例では, 選択的順行性冠潅流法と比較して手技が容易である上に良好な手術野が得られ, 最適な心筋保護法であると考えられた. |
