アブストラクト(30巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁狭窄症に対する開心術前後の心エコー図に関する研究─特に左心機能の変化について─
Subtitle : 原著
Authors : 安野憲一, 奥井勝二
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 3
Page : 394-404
Year/Month : 1982 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 術後の臨床症状の著明な改善がみられた僧帽弁狭窄症(MS)32例に対し, 術前後及び術中に心エコー図を記録した. 更に施行した直視下交連切開術(OMC)24例, 僧帽弁置換術(MVR)8例の術式別の左心機能を術後2年間, 経時的に等尺性握力負荷による心エコー図法検査を施行して比較検討し, 以下の結果を得た. 1. OMC群の僧帽弁前尖後退速度(DDR)は, 術中より著明に上昇して術中既に手術効果を容易に判定し得た. 術後1ヵ月には正常値下限へ復帰し, 以後2年まで臨床症状の改善と一致して安定した値を保持した. 2. 左房径(LAD)は, 術後6ヵ月以内に縮小傾向が認められ, 特に洞調律(NSR)群で平均20%の有意の減少となったが, 6ヵ月以降では術前値と有意差がなくなり, 術後の遠隔期の臨床症状の改善は, 左房径の影響を受けないと考えられる. 3. 両手術群とも, 安静時における術後左室拡張末期容量指数(LVEDVI), 1回拍出係数(SI)の著明な増加を認め, MVR群の左室後壁最大拡張速度(max DPWV)の増加も術後早期より著明であった. 4. 等尺性握力負荷による運動負荷では, 両手術群とも術後6ヵ月以降にLVEDVI, SI, 駆出率(EF), 左室平均円周短縮速度(mVcf), max DPWVの著明な増加を示し, 両群間で差を認めず術後の臨床症状の改善と一致した. 以上の成績から, 術後の心筋予備力は, 両手術群間で差を認めず, 従って弁の病変が高度の場合はMVRでも十分な術後の左室機能が期待できると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁狭窄症, 心エコー図法, 左心機能, 等尺性握力負荷
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