アブストラクト(30巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : IABPの予防的使用に関する臨床的研究
Subtitle : 原著
Authors : 北村惣一郎*, 中埜粛, 賀来克彦, 井原勝彦**, 大山朝賢*, 奥田彰洋, 河内寛治*, 村田紘崇***, 康重夫*, 榊原哲夫, 酒井敬***, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科, *奈良医科大学第3外科, **紀南総合病院外科, ***桜橋渡辺病院心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 6
Page : 1053-1059
Year/Month : 1982 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 昭和52年7月より56年3月までの3年8ヵ月の間に手術した虚血性心疾患の2群につきIABPの予防的使用の意義を検討した. 予防的使用の適応としてIABPを使用したもの29例(I群), 同適応があるが使用しなかったもの30例(II群)であり, 平均年齢はいずれも54歳であった. この適応として1)不安定狭心症例, 2)左冠動脈本幹疾患例, 3)左室駆出率0.4以下の低左室機能例とした. この適応に合致したI, II群例は共に同期間の全手術例中の38%であった. いずれも手術開始時には臨床的, 心電図的, 血行動態的にほゞ安定している症例で緊急手術例は含まれていない. 術前の血行動態的指標でもI, II群間に有意の差はなかった. 手術死亡率はI群14%, II群3%でI群は全て出血性梗塞による心原性死亡, II群は非心原性死亡であった. 各同期間内での予防的使用適応外症例はそれぞれ47, 49例で手術死亡率はいずれも0%であった. 死亡率のほか心電図上の新Q波出現率, ICUでのカテコラミン使用率などからみてもIABPの予防的使用の優位性は証明し得なかった. II群で術後IABPを必要としたものは僅かに7%でI群では明らかに「使い過ぎ」ており, 下肢血行障害など使用に伴う合併症を14%に認めた. いわゆる重症冠動脈疾患でも手術時臨床的, 心電図的, 血行動態的にみてほゞ安定しており, 進行中の虚血存在の証拠のない症例ではIABPの予防的使用の意義は証明し得なかった. 術中, 術後必要時直ちに使用可能の体制をとっておればこれら症例におけるIABPの予防的使用は不要と結論した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : IABP, 予防的使用, 左冠動脈本幹病変, 低左室機能, 術中心筋梗塞, 出血性梗塞
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