アブストラクト(30巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高度肺高血圧症を伴った僧帽弁狭窄症の肺内血流再分布様式の特徴, デジタル肺血流像(DPI)による評価
Subtitle : 原著
Authors : 田中健*, 鈴木紳*, 高橋早苗*, 木全心一*, 広沢弘七郎*, 石原茂樹**, 夏秋正文**, 今村栄三郎**, 橋本明政**, 林久恵**, 小柳仁**
Authors(kana) :
Organization : *東京女子医科大学日本心臓血圧研究所内科, **東京女子医科大学日本心臓血圧研究所外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 6
Page : 1069-1076
Year/Month : 1982 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺内血流分布は正常では下肺を主とする. 僧帽弁狭窄症のために起こった肺内血流分布の異常をデジタル肺血流像(DPI)により評価し, 重症例における肺内血流分布異常程度とその血行動態との関係を検討した. 対象は運動能力がNYHA4度で僧帽弁置換手術の対象となり, 左心室造影で有意な僧帽弁逆流を認めない僧帽弁狭窄症10症例であった. これら重症例には下肺野低肺血流域の有無による本質的に異ると考えられる二種類の肺内血流再分布様式が認められ, これをA, B型とした. おのおの5例であった. (mean±SD). A型:正面DPIでは上肺野に, 側面DPIでは下肺野に高肺血流域を認め, 低肺血流域は認めなかった. (平均肺動脈圧51.0±2.0mmHg, 心係数1.38±0.29l/m・M2, 肺血管抵抗13.9±3.38HRU). この病態は高度肺高血圧低心拍出高肺血管抵抗と考えられた. B型:正面, 側面DPIの上肺野に高肺血流域を, 下肺野には著明な低肺血流域を認めた. (平均肺動脈圧59.2±9.2mmHg, 心係数2.73±0.49l/mM2, 肺血管抵抗9.16±1.62HRU). これら10症例のうち2症例は手術不適であり, また術中死亡2例, 生存例ICU平均滞在7日間と手術成績も決して芳しくなく, 重症僧帽弁狭窄症と考えられた. 重症僧帽弁狭窄症にはA, B二種類の肺内血流再分布様式があり, 共に高度肺高血圧症を示すが, 心係数(p<0.01), 肺血管抵抗(p<0.05)では著明な差が認められた. 多くの報告で特に手術危険度が高いとされている低心拍出高肺血管抵抗を合併したA型ではむしろ肺内血流分布の異常程度が少ないと考えられた. 今回の結果よりDPIにより重症僧帽弁狭窄症において低心拍出高肺血管抵抗の有無を非観血的に推定し得る可能性が示された. また側面DPIパターンも利用した三次元的肺内血流分布評価法は従来の上下肺血流比法などの評価法より優れていることも示された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : デジタル肺血流像(DPI), 肺内血流分布, 肺高血圧症, 僧帽弁狭窄症
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