アブストラクト(30巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心房及び心室ペーシングが左心機能に及ぼす影響─特に左室心筋局所血流量による検討─
Subtitle : 原著
Authors : 鄭正勝, 橋本勇
Authors(kana) :
Organization : 京都府立医科大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 6
Page : 1108-1120
Year/Month : 1982 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心房ペーシング及び心室ペーシングによる左心機能, 特に左室心筋局所血流量及び血流分布に及ぼす影響を明らかにするため, 家兎20羽を用い, 洞停止を作製し, 洞停止, 心房ペーシング, 心室ペーシングの下での, 左室心筋局所血流量, 心拍出量, 大動脈圧, 左室圧をおのおの測定し, また, 左室仕事量を算出し, 比較, 検討を行った. 心房ペーシングの心拍出量は心室ペーシングの心拍出量に比較して大であり(p<0.001), 54.3%の増加を認めた. 左室心筋局所血流量は, 血流分布を見ると, 心房ペーシング, 及び心室ペーシングにおいて, CX areaの血流量はseptumより有意に高値を示したが(p<0.05), 他の領域とは統計学的には有意差は認めなかった. 次に4ヵ所の心筋局所血流量を比較すると, CX areaを除いて, 心房ペーシングにおける心筋局所血流量は, 心室ペーシングにおける心筋局所血流量より有意に高く(p<0.05), 洞停止と心房ペーシング, 洞停止と心室ペーシングには有意差は認めなかった. 心房ペーシングと心室ペーシングを比較すると, 心室ペーシングにおいては, 1. 拡張期には駆動圧と隔壁圧の差が小である. 2. 収縮期には大動脈圧と左室圧の差は両者一定である. 3. 低い動脈圧, 左室圧がafterload, wall tensionを低下し, 酸素消費量の減少, 冠血流の減少を惹起している. 以上の機序から心室ペーシングでは, 心房ペーシングに比較して心筋局所血流量が低下している. しかし, この状態は拍出量需要の増大が起こった場合, 心房ペーシングに比較してinotropic state, initial tensionの増加によって対処せねばならず, 酸素消費量の増加を招く. 一方拡張期の隔壁圧増大は冠血流を減少させる方向に動く. 従って, 拍出量増大, 動脈圧上昇, 仕事量増加が起こってもそれに対応する冠血流の増加が行えない. その結果虚血を惹起する. 以上から, 冠循環面でみても, 心室ペーシングは心房ペーシングに比較して不利である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心房ペーシング, 心室ペーシング, 心筋局所血流量, 水素ガスクリアランス法, booster pump action
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