Abstract : |
食道癌術後に高頻度に発生する肺合併症の原因として, 術後の咳嗽力低下による喀痰喀出障害に着目し, 食道亜全摘をはじめとする開胸手術後早期の咳嗽力, 咳嗽反射を測定し, 次のような結果を得た. 1. IMV呼吸管理下の回路の一端にHewlett Packard Respiratory Systemを接続し, 生食を気管内に注入して誘発した咳嗽の数, 最大気道内圧, 最大瞬間気流速度を定量的に表すことを試みた. 2. 食道癌術後では, 他の開胸術後と比較し著明な咳嗽反射, 及び咳嗽力の低下が認められた. 手術術式との関連では開胸, 開腹, 気管剥離, 上縦隔侵襲, 迷走神経肺枝の損傷, 横隔膜損傷などの要因が重なるほど術後咳嗽力は低下していた. 3. 肺合併症を発生した症例の咳嗽力はいずれも低値を示しており, 咳嗽力低下と肺合併症発生との密接な関連が認められた. 4. 肺合併症を予防する上での術後早期の咳嗽力の安全域を咳嗽数4回以上, 最大気道内圧10cmH2O以上, 最大瞬間気流速度40L/分以上と設定し, 術後早期咳嗽力がこれらの値以下を示す症例に対しては気管内チューブ抜去を延期して積極的に喀痰吸引を行い, 良好な成績を挙げている. |