アブストラクト(30巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ナイトロプルシッド・IABP併用法による心筋虚血領域の改善に関する研究
Subtitle : 原著
Authors : 上田恵介, 尾本良三
Authors(kana) :
Organization : 埼玉医科大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 7
Page : 1202-1212
Year/Month : 1982 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Nitrite系末梢血管拡張剤であるNitroprusside(NP)の急性心筋梗塞に対する治療効果は, その平均動脈圧低下度に大きく影響されるといわれている. 我々は, 今回, NPによる大動脈基部平均血圧の低下をIABPによつて補助するNP-IABP併用法を用いて, 平均動脈圧の虚血心筋に及ぼす影響と, 心筋虚血領域の改善に対する同併用法の有効性について, 検討した. 実験的非ショック急性心筋梗塞犬を用い, NP単独投与群(I群)6頭, NP-IABP併用群(II群)7頭の計13頭を対象として, 大動脈基部血圧, 平均左房圧, 心拍出量, 心外膜心電図でのST-segment上昇値を測定した. 心筋虚血に対する効果は, 虚血中心領域でのST平均上昇値(ST)の変動により評価した. 名実験開始直前値をコントロール値とし, 梗塞作製後30分及び120分に, それぞれ20分間の実験を行った. 実験中, 収縮期血圧がコントロール値の70~80%に低下する量のNP(100~180μg/min)を持続点摘投与すると共に, 輸液を調節して平均左房圧をほぼ一定に保った. その結果, 梗塞作製後30分での実験では, II群の大動脈基部平均血圧がI群に比較して有意な高値を示し(I群:73.0±2.0%, II群:83.6±2.0%, p<0.001), 同時に, 虚血中心領域におけるSTは, I群では上昇し(135.5±10.4%), II群では下降した(61.6%±6.6%). 120分後での実験では, 大動脈基部平均血圧は同様にII群で有意な高値を示したが(I群:73.8±3.1%, II群:82.5±6.0%, P<0.05), 両群ともSTの変化はみられなかつた. NPの末梢血管抵抗減少効果を利用して虚血状態の改善を得るためには, 平均動脈圧の維持が重要である. NP-IABP併用法は, NPの薬理学的効果を阻害することなく大動脈基部平均血圧を上昇させ, 心節の虚血状態を改善した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ナイトロプルシツド単独投与, ナイトロプルシツド・IABP併用法, 実験的急性心筋梗塞, 心筋虚血領域,心外膜心電図ST平均上昇値
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