アブストラクト(30巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 長時間呼吸補助を目的としたHollow Fiber型膜型人工肺の開発
Subtitle : 原著
Authors : 森本保, 草川実
Authors(kana) :
Organization : 三重大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 8
Page : 1351-1366
Year/Month : 1982 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)をはじめとする長時間体外循環において, 血液損傷が少なく安定したガス交換能の得られる膜型人工肺の開発を目的として, 1.2m2 silicone hollow fiber型膜型人工肺(SHMO)を試作し, in vitroにてガス交換能力試験を行うとともに, 犬での24時間のV-Aバイパスを行い, ガス交換能の変動及び血液学的評価に関する検討を行った. 血液学的評価は1.2m2 silicone coil型膜型人工肺(MM0-6, 泉工社)と比較し, 膜面の形態的変化, 赤血球及び血小板の形態を電顕的に観察し, 溶血, 血小板数, 血小板粘着能の結果と併せて検討し, 以下の結果を得た. 1. SHMOのrated blood flowは1lmin/m2で, O2 transferは43ml/min/m2 CO2 transferは40ml/min/m2であり, 長時間V-Aバイパス時にも安定した良好なガス交換能を示した. 2. V-Aバイパス24時間後の膜面は, MMO-6では血小板凝集, フィブリン, 血球から成る粘着物がかなり膜面を覆っていたのに対して, SHMOでは血液成分の付着はほとんどみられなかった. 3. 血漿遊離ヘモグロビン量はMMO-6では7.5mg/dl/hrと経時的に増加を示したが, SHMOではV-Aバイパス24時間後で45mg/dlが最高値であった. 赤血球の走査電顕像はSHMOではMMO-6に比べ著明に変形が少なかった. 4. 血小板数はMMO-6ではV-Aバイパス5分でバイパス前値の18±2.8%, 24時間後は32.5±3.5であったのに対して, SHMOでは各69.6±7.3%, 84.7±18.1%と良好に保持されていた(p<0.005). 血小板の透過電顕像はSHMOではMMO-6に比べ, 細胞膜及び細胞内微細構造ははるかに良く保たれていた. しかし, 血小板粘着能は両者とも20%以下の低値を示し有意差はなかった. 以上の結果より, SHMOは長時間体外循環において血液損傷が少なく, 安定したガス交換能を維持し得るECMOに適した膜型人工肺であると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : silicone hollow fiber型膜型人工肺, extracorporeal membrane oxygenation, 血液損傷,血小板形態, 電顕的観察
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