Abstract : |
虚血時の心筋保護に対するpotassium-induced cardioplegiaプラスhypothermiaの有効性を, 短時間保存後同所性同種心移植の過程で, 実験的に評価した. 心機能評価のため, 体血圧(SAP), 心拍出量(CO), 中心静脈圧, 左房圧, 左室圧, 左室圧一次微分(LVdp/dt), 及び心電図を通じて, 経時的に測定した. 対照値測定後, donor犬を脱血死せしめ, その屍体を利用して1時間保存したdonor心を, recipientへ体外循環下に同所性に移植した. 実験を保存心の冠灌流の方法により3つのgroupに分けた. GroupIは4℃の乳酸加リンゲル液で, 保存開始後0分, 45分の2回冠灌流を行った. GroupIIは4℃のcardioplegia液(カリウム濃度25mEq/L)で, GroupIと同様の間隔で冠灌流を行った. GroupIIIはGroupIIと灌流液, 間隔を同じにして冠灌流を行った後に, 保存心のrecipientへ移植する途中で, 第3回目のcold cardioplegiaによる冠灌流を追加した. donor犬の死後より, recipientへ移植した保存心が冠灌流を再開するまでの時間は, 2時間30分で, この時間は全groupともに統一された. 移植後2時間を観察期間とし, この間は保存心が体外循環及びinotropic drugの補助なしで, recipientの全循環を維持した. 保存中の心筋温は全groupとも12℃前後であった. GroupI, IIは移植操作中21-22℃に上昇したのに対し, GroupIIIは移植操作中も12℃近辺に維持された. LVdp/dtはGroupI, II, IIIで, 移植後2時間でそれぞれ対照値の58.2±1.8%, 70.1±5.1%, 88.3±3.9%まで回復し, GroupIIIはGroupI(p<0.001), GroupII(p<0.01)に比較して, 著明な回復率を示し, GroupIIはGroupIに比して回復率において有意の差を示した(p<0.01). SAP, COも同様の傾向を示した. potassium-induced cardioplegia及び低温を併用して保存された心臓のcontractilityは, 2時間30分のanoxiaに引き続く同所性移植2時間後に, 対照値の約90%の回復を示し, 本法での虚血時の心筋保護効果を, 総合的にかつ具体的に証明し得た. |