Authors : |
荒木純一*, 佐藤成和*, 伊藤孝*, 近江三喜男*, 加畑治*, 横山温*, 田所正路*, 堀内藤吾*, 毛利平** |
Abstract : |
低体温法は乳幼児開心術の補助手段として有用とされているが, 術後の脳神経障害の発生が問題となる. 本研究では, 1976~1980年の教室における低体温下開心術症例の術後脳神経障害の発生を検討し, 低体温法における許容遮断時間を推定することを目的とした. 対象は2ヵ月~22歳までの77例ですべて先天性心疾患であった. 使用した低体温法は年齢, 疾患, 病状の重篤度などから, (1)表面冷却・表面加温法11例, (2)表面冷却・中心加温法9例, (3)表面冷却+中心冷却・中心加温法57例, に大別された. 麻酔は原則として閉鎖式エーテル深麻酔を採用した. 術後脳神経障害の有無を, 臨床所見, 脳波検査, 頭部CTスキャン所見から検討した. 早期死亡は32(手術死13例)で大部分が複雑心奇形であった. このうち手術死を除いた症例で術後脳波神経障害を有したと思われたのは1例であり, 不適当な麻酔方法に原因があると思われた. 生存45例中, 5例に術後脳神経障害の発生あるいは増悪をみた. 5例中4例は循環遮断時間が60分を越えており, 他の1例は循環遮断時間は34分(18℃)であったが体外循環時間は72分とやや長かった. 前者4例は循環遮断時間の延長に, 後者の1例は体外循環の際の空気微小塞栓に原因が求められた. 以上の結果より, 低体温における許容循環遮断時間は20℃以下であっても60分を越えるべきでないと結論された. |