Authors : |
荒木純一*, 佐藤成和*, 伊藤孝*, 近江三喜男*, 加畑治*, 横山温*, 田所正路*, 堀内藤吾*, 毛利平** |
Abstract : |
低体温法における許容循環遮断時間を推定するためには, 脳組織の変化が組織学的に可逆性か, 非可逆性かの判定が不可欠との観点に立ち, 33頭の雑種幼若犬を用いて実験を行った. 実験モデルは臨床に使用されているエーテル深麻酔による表面冷却式低体温法を採用した. 実験群は対照実験, 急性実験(20℃まで冷却のみ, 20℃にて30分遮断, 10℃にて120分遮断), 及び慢性実験(20℃にて30分遮断, 60分遮断, 10℃にて120分遮断)から成り, 脳組織の各部位について神経細胞の変性の程度を検索した. 屠殺には両側頚動脈からのホルマリン注入法を用いた結果, 再現性ある組織標本を得ることができた. 60分及び120分遮断群では術後小脳に非可逆性変化を認めたが, 30分遮断群では認められなかった. 大脳皮質には, 6ヵ月の時点にても神経細胞の萎縮性変化が残存していた. 術後運動障害を60分遮断群では4例中2例, 120分遮断群では2例中2例に生じ, 前述の小脳の非可逆性所見との一致をみた. これらの結果より, この実験モデルの許容遮断時間は, 20℃で30~60分の間にあるものと推定された. |