Abstract : |
転移性肺腫瘍の外科的治療の報告は多いが, これを原発病巣別に検討した報告は少ない, 今回, 愛知県がんセンター病院外科第2部で, 1980年までの16年間に肺切除が行われた結腸, 直腸癌肺転移の16例を対象に臨床的事項を検討した. 1981年6月現在, 16例中7例が肺切除後101, 81, 46, 39, 22, 21, 15ヵ月それぞれ再発なく生存中である. この予後を左右したと思われる因子は, 1つは原発病巣切除より肺転移出現までの期間である. この期間の長い症例の予後は良好であった. 他の因子は肺転移の病巣数である. 病巣が単発症例の予後は明らかによかった. 血中CEA値は病状を表わすよい指標となる. 血中CEA値を測定し得た6例では, 肺切除前は3例が2.6ng/ml以上で陽性であった. 肺転移切除後は低下し, 死亡した2例は新しい転移再発の出現により上昇した. 結腸・直腸癌切除後の肺転移が切除の適応となる頻度は少ない. 母集団の明確な当院外科第3部で1978年までの14年間に, 原発病巣の治癒手術を受けた結腸癌169例と直腸癌409例を対象に調査した. 578例のうち肺転移が再発の初発症状であった症例は34例であった. このうち肺転移が切除の適応となった症例は11例(1.9%)であった. また, 直腸癌, 右結腸癌よりも左結腸癌に適応となる症例の割合が多かった. 我々は結腸・直腸癌肺転移の外科的治療について次のように考えている. 有効な化学療法, 放射線療法のない現時点では, 患者が手術に耐えられ, 原発病巣が完全に治癒し, 肺以外に遠隔転移がなく, 胸部レ線上転移病巣が単発で, 原発病巣切除より肺転移出現までの期間が長い症例には, 積極的に外科的治療を行うべきである. |