アブストラクト(30巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : A-C Bypass術における心筋保護-CoQ10-Lidocaine-Aprotinin併用による薬理学的心筋保護増強効果-
Subtitle : 原著
Authors : 岡村高雄, 鈴木章夫
Authors(kana) :
Organization : 順天堂大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 8
Page : 1434-1445
Year/Month : 1982 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 虚血性心疾患における心筋保護の困難さが示唆されているため, 従来より用いられているGIK cardioplegia法及び全身低体温, 局所冷却法に加え, 異なった作用機序により虚血心筋保護効果を発揮すると考えられるCoenzymeQ10(CoQ10), Lidocaine, Aprotininの前投与及びそれに引き続く持続投与を併用しA-C Bypass術における新しい心筋保護法の開発を目的とした. 教室にて施行された合併手術を含まないA-C Bypass術症例39例を対象とし, Lidocaine-Aprotinin使用群(18例)とCoQ10-Lidocaine-Aprotinin使用群(21例)に分けて左心室機能, 心筋遊出酵素としてCPK, MB-CPK, m-ASTを経時的に測定し, 両群を比較検討した. CoQ10は人工心肺(CPB)開始前に5mg/kgを静注後, 5mg/kgを大動脈遮断解除2時間後まで滴下させ, LidocaineはCPB前より1mg/minにて手術終了後まで滴下させ, Aprotininは5,000KU/kgをCPB前に静注後, 5,000KU/kgを充填液に加えた. Lidocaine-Aprotinin群とCoQ10-Lidocaine-Aprotinin群との間には, 病変部数, 術前の左心室機能, 大動脈遮断時間, 薬剤以外の術中心筋保護等にて全く有意差を認めなかった. Lidocaine-Aprotinin群では大動脈遮断解除6時間後にLVSWIは35.7±2.8(gm.m/beat/m2)と低下を示したのに対し, CoQ10-Lidocaine-Aprotinin群は45.8±2.4(gm.m/beat/m2)でありCoQ10-Lidocaine-Aprotinin群で有意に心機能の低下を防止し得た(p<0.05). またcatecholamineの使用量も減少を認めた. MB-CPKは大動脈遮断解除6時間後にLidocaine-Aprotinin群は22.2±2.5IUであったのに対し, CoQ10-Lidocaine-Aprotinin群は12.9±1.6IUであり, CoQ10-Linocaine-Aprotinin群で有意に低値を認め(p<0.01), またm-ASTも低値を示した. 以上よりCoQ10はA-C Bypass術における心筋保護効果を有し, 更にCoQ10, Lindocaine, Aprotininの前投与及び引き続く持続投与はLidocaine, Aprotinin併用法より一層優れた心筋保護効果を発揮するものと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : A-C Bypass術, 心筋保護, CoenzymeQ10, Lidocaine, Aprotini
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