アブストラクト(30巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : A-Cバイパス術後のPerioperative Myocardial Infarction-特に術前左室収縮能と体外循環開始前の因子との関係から-
Subtitle : 原著
Authors : 小野寺栄司, 大瀬良雄, 砂盛誠, 鈴木章夫
Authors(kana) :
Organization : 順天堂大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 9
Page : 1520-1528
Year/Month : 1982 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 虚血性心疾患に対するA-Cバイパス術は, 冠状動脈の血流増加により心筋の虚血性障害を防止する術式である. しかるに現状では, Perioperative myocardial infarction(PMI)の発生は皆無ではなく, 又PMI発生部位とその心筋部位との関係はいまだ定説がない. 更に冠血行再建がPMI発生に及ぼす影響についても不明な点が多く意見の一致をみていない. そこで我々の施設における276例のA-Cバイパス術症例を対象に, 心電図でのnew Q waveの出現によりPMIを診断し, その発生にかかわる要因について検討した. 次にPMI発生例と診断された17症例で術前の左室造影より判定したsegment motionとPMI発生の関係及び血行再建の有無との関係につき検討した. PMI発生にかかわる要因の検討では, PMI群での左室駆出率(EF)が有意に良好な値を示しており, 又術前の左室segment motionとの関係でもその動きが障害されていない領域に多くのPMI発生が認められた. 更に3枝病変例に限定してEFとPMI発生の関係を検討すると, EF70%未満の群では1.2%(1/81)のPMIの発生率であるのに対して, 70%以上の群では21.6%(8/37)の発生率であり, EFの良好な例に, PMI発生のリスクが高いものと考えられた. 次に3枝病変で70%以上のEFを有するPMI発生のリスクが高いと考えられた症例のうちGIK心筋保護液を用いて手術を行った23例につき検討すると, PMI発生例では100%(4/4)PMI非発生例では53%(10/19)に体外循環開始前の低血圧発生が認められ, 有意差は得られなかったがPMI発生例で麻酔導入後の低血圧発生が多い傾向を示した. 血行再建の有無とPMI発生の関係では46%のPMIは血行再建の成された冠状動脈の灌流域にPMIの発生が認められた. 以上よりPMIの発生をnew Q waveの出現で追求するとPMIは重症冠状動脈病変例においてはEFの良好な例に多く発生するものと考えられ, その予防には体外循環始前の心筋保護も忘れてはならないものと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 虚血性心疾患, Perioperative myocardial infarction, A-Cバイパス術, 左室駆出率, 心筋保護
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