Abstract : |
症例の冠動脈造影所見につき, 外科的立場より検討を加えた. 対象症例は, 器質的病変に冠動脈スパズムを伴い, 手術を行った16例で, 内訳は, 異型狭心症8例, 不安定狭心症7例, 陳旧性心筋梗塞1例である. また非手術症例として異型狭心症, 造影時冠動脈スパズム症例34例と, 冠動脈スパズムを認めず, 労作狭心症と考えられた32例を対照とし, 検討した. これらの症例に対し, 冠動脈造影所見より冠動脈各部位における, ニトログリセリン投与前後の径を測定し, その増加率を%change coronary dilatation(%ΔCD)として表した. その結果, 1)非手術症例の異型狭心症を含む, 冠動脈スパズム例の%ΔCDは, 平均0.33±0.11であり, 非スパズム症例の%ΔCDは平均0.15±0.11と少なかった. 2)異型狭心症例と, 造影時スパズムを認めた症例の%ΔCDの比較では, 双方ともほぼ同じ値の類似したパターンの拡張率を示した. 3)冠動脈器質的狭窄罹患本数と, %ΔCDの関係を検討してみると, 非スパズム症例では, %Δ CDと罹患本数の多少による関連をほとんど認めず, スパズム症例においても統計学的有意差を認めなかった. 4)手術症例16例につき%ΔCDを見ると, 術中スパズムを生じなかった症例の平均拡張率は0.22±0.08であり, 術中スパズムを生じた7例の平均値は, 0.52±0.31と最も高い値を示し, 特に左前下行枝領域の%ΔCDが著明であった. これらのことより, ニトログリセリン投与による冠動脈径拡張率の高い症例は, (%ΔCD>50%)術中冠動脈スパズムを生じる危険があることが示された. |